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第51話《Ⅱ章》斜陽④
(しまった……)
これは一撃必殺の剣。
一撃で倒さなければ。
「瑠月ッ」
《クロノス》が取り付かれる。
「離脱だ!」
作戦失敗だ。
刃は蛟を貫いた……
(なのに倒れない)
蛟の生命力を甘く見ていた。
ビエェェエエエーッ!!
甲高い叫びが嘶き、敵意が《クロノス》に向かう。
今の《クロノス》に対抗する術がない。
(退くしかない)
「あなたの判断は間違っていません」
(瑠月?)
「退けば敗北する事はありません。負けないための判断としては英断です」
しかし。
「退けば千載一遇の勝機を失います」
瑠月の手が俺の手に重なる。
「私を信じて下さい」
重なる手の熱さに。背中を包んで穿つ鼓動の強さに圧倒される。
「私はあなたを護る剣です」
「瑠月、お前を信じる」
お前を選んだのは俺だ。
「我を護る剣となれ」
「Yes, your Highness」
機体がうなる。
「《クロノス》加速。加速による衝撃を剣に上乗せし、一気に振り切ります」
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