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第52話《Ⅱ章》斜陽⑤

 空が低い。  厚い雲の垂れ込めた空に、甲高い悲鳴が轟く。 「蛟はッ」  鱗を貫いた剣を引き抜いたスピードで《クロノス》が全速後退する。  バシィィーンッ  叩き付ける尻尾を辛うじてかわした。  低い空を砂が覆う。 「問題ありません。致命傷を与えました」  すうっと瑠月が目を細めた。 「作戦は成功です」  蛟が砂に潜る。  深追いは必要ない。  だが…… (本当に作戦は成功したのか)  成功したのなら…… 「なぜ応答しない!」  バンッ  無線を叩き付けた。  こんなの八つ当たりだ。  八つ当たりだけど。 (俺の戦略は常に100%の成果を出さねばならない)  なのに、なぜ。 「02−XG3は応答しない!」  モニターを凝視する。  通信は繋がっている。 「《クロノス》上空待機します」 「なぜだ。02−XG3に降下しろ」 「危険です」 「何の危険がある。蛟は排除した」  最大の脅威は取り除いたんだ。 「通信が復活しない以上、状態が分かりません。間もなく整備班が到着します。彼らに任せましょう」 「待つ時間が惜しい」 「通信をわざと滞らせている可能性もあります。シモンの罠かも知れません」  帝国軍は俺達が掌握した。  一気に不利に陥ったシモンが企てを起こす可能性はある。  だが。 「あの男は一人では何もできない」  帝国の後ろ盾がなければ…… 「もう何もできないでしょう。だから怖いのです!」  鬼気迫る眼光が俺を睨みつけた。 「瑠月……」  それは…… 「どういう意味だ?」

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