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第63話《Ⅲ章》うつつの鳥籠②

 俺の国…………  『楼閣』と呼ばれたアマクサが国になる。 「あなたの国が私を受け入れて下されば、そこは私の居場所でもあります」  『楼閣』と呼ばれた鳥籠は…… 「鳥籠は、もう……」 「鳥籠ではありません」  ぎゅっと抱きしめられた。  きつく、強く、胸の中に…… 「あなたの国に私は亡命を望みます。国という器で、あなたを捕らえてしまうかも知れません。国家元首になれば、あなたの自由は制限されるかも知れません。それでもあなたは、私が守ります。生涯ただ一人の主として、あなたにこの身を……」  我が主(your highness)  守り抜くと…… 「誓います」  蒼い瞳が落ちてくる。  視線だけで鼓動が止まりそうだ。  まるで時間さえも止まっているようにさえ感じる。  唇が降りてくる。  でも止まった。 「しないのか」  キス 「唇にしたいです」 「すればいい」 「してしまうと歯止めがきかなくなりますから」 「お前の理性はずいぶん薄っぺらいんだな」 「そうやって、あなたは煽るんですね……」  不意に唇が押し付けられた。  目を瞑る隙もなく。 「んっ、んんー」  舌が割り込んでくる。  唇を割って、歯の間から。 「あなたが誘ったんです。責任とって下さいね」  一瞬離れた唇が耳朶に触れて、再び舌が割り込んだ。  有無を言わさず、獰猛に絡め取られる。  舌先から舌の根元まで、絡みつく。  クチュクチュ、濡れた水音を奏でて這う舌が口の中を蹂躪する。 (酸素、足りない……)  頭がぼぅっとする。  思考も意識も絡め取られる。理性を奪われる。逃げようとも貪欲に追ってきて、絡めとっていく。 (こんなのっ)  口の中、お前の舌から逃げているのか、追っているのか分からなくなる。水音がチュクチュク鼓膜を犯して翻弄する。  息もできない。  全部、みんな奪われる。 (それでも、お前は……) 「それでも、あなたは大切にしたいから」 (キスだけで……) 「キスだけじゃ……」 (終わるのか?) 「満足できないけれど、あなたを幸せにする方法は、あなたを抱くだけ事じゃないと思っているので」  だから…… 「自分の信じる方法で、あなたを幸せにします」

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