74 / 78
第74話《Ⅲ章》うつつの鳥籠⑦
「サキモリは卑怯者じゃない。正々堂々、帝国を討つ」
「なにをっ」
「動くな。動けば、あんたも巻き込むぞ」
「もう巻き込まれている」
「そうだったな」
銃口が俺を捕らえている。
「龍族皇子、あんたが宰相処刑を執行できないのなら要求を変えよう」
息を飲んだ。
(このサキモリ、何かが違う)
直感だ。
突発的な暴動に見せているが……
(俺の考えている以上に頭がキレる)
「帝国宰相、お前が撃て」
(瑠月が俺を……)
撃つ。
「断る。輝夜様を撃つくらいなら」
カチャリ……
銃口が静かに上がる。
「私を撃つ」
「やめろッ!」
撃鉄が今にも引かれる。
銃口が瑠月のこめかみに掲げられた。
「撃つなッ!瑠月!」
「懸命な判断だ。その命令をどうして、あの時下さなかったんだッ!」
あの時、とは……
「撃つなと命じていれば、死なずに済んだんだッ」
シモンを撃ったサキモリ兵は、帝国兵に射殺された。
あの時……
撃つなと命令していれば、あのサキモリは死ななかったかも知れない。
「状況が違う。私達はあの近くにいなかった。命令しても、部隊には届かない」
「黙れ、宰相」
ギランと敵意が向く。
「サキモリだから見殺したんだ」
「軍規違反だ」
薄い明かりの灯る部屋で、憎悪に揺れる双眸がこちらを向いた。
「味方に発砲し、味方を殺したのは軍規違反だ。射殺は間違っていない」
「輝夜様ッ」
瑠月は、このサキモリを煽るなと言いたいのだろう。
(煽るつもりはない)
これは……
「事実だ」
ともだちにシェアしよう!