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第9話 雑誌の撮影⑦
先程とは違い、“官能的”という言葉がしっくりくる。
デビューしてから、初めて経験するテーマの撮影に、俺はいま自分の中にいるもう1人の“官能的”な俺を探すのに必死だった。
クールな顔は何度か撮影でもやっているし、何度も鏡の前で練習してきたが、こういう“官能的”な顔は、一切やったことがない。
カメラを持ち、人差し指を唇にあてながら俺ら5人を見渡した。
「じゃぁ、最年長順に撮影して行こうかな。まずは、純斗くんから撮っていこうか」
まさか、まさかの一番手で焦る気持ちを隠せない。
何故最年長からなのか、自分が最年長である事をこの時初めて恨んだ。
「セクシーな感じ……エロティックな感じ……」
ブツブツ言いながら、ベッドに向かった。
これでもかというくらい、頭をフル回転させた結果……。
「ちょっと〜、純斗くん! これじゃまるで、おバカさんじゃない」
まさかの“おバカさん”呼ばわり。何たる言われようだ。
俺なりに、セクシー&エロティック = 口を開ける事。
だったのだが、違ったみたいだ。
「口開け過ぎだよ、純斗!」
「あら、じゃぁレオンくん、やってくれる?」
はぁ〜い、と可愛らしく返事をしたかと思えば、急に男の顔になった。
顔は、どちらかといえば中性的な顔立ちで、スカートを履いてメイクをしたら、確実に女の子になれるレオン。
栗色の髪が、ライトで照らされて、その色を一層際立たせる。
中性的な顔立ちの中に漏れ出す色気。
魅入っていると、いつの間にか終わっていた。
「はい、オッケー。素晴らしかったわ! じゃぁ次、永人くんお願い」
いつの間に練習してんだろうか。
気になって戻ってきたレオンに聞いてみる。
「練習とかじゃないよ。自分の中に秘めている“男”というものを出す。ただそれだけ」
参考になりそうにない答えに困惑した。難しすぎる。
「それが出来てたら“おバカさん”呼ばわりなんてされてないから!」
「まぁ、あんま深く考えず、リラックス、リラックス!」
リラックスしたら、またアホ面になりそう。
なんて考えている横で永人が微笑みながらベッドに向かった。
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