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第18話 番宣②
きょうは、番組の収録で永人と一緒だ。他のメンバーはいない。
3rdシングルのリリース告知で、番組のゲストとして呼ばれた。
ひな壇に座って、VTRを観るだけの番組だが、印象を残すために頑張ろう。
おはよう、と永人が楽屋に置かれていたアンケート用紙に目を通していた。
「あ、お、お、おはよう」
楽屋を開けた瞬間に言われて、何も心の準備をしていなかったから、すごく動揺して挨拶をしてしまった。
もう一度整理するが、まともに会話を1週間してこなかった。
話す内容も仕事の業務連絡&確認事項のみ。
なのに、永人のやつ、さらっとしすぎではないか?
楽屋のドア前から動かない俺を永人が不審な目で見てくる。
「座ったら? ドアの前、邪魔になるよ」
俺だけドギマギしている。
業務連絡以外の会話をするのは1週間ぶりだ。
1週間なんて普通のことだろうと思うだろうが、ほぼ四六時中一緒にいて、仲がいいグループで1週間口を聞かないなんて、いままでなかったことだ。
何を話せば良いのか。
まず、あのことをはっきりさせなければ。
「永人」
「何?」
うわ、めちゃくちゃ機嫌悪いじゃん。
不機嫌丸出しの低い声がシーンとした楽屋に反響した。
「あのさ……、この前のことなんだけど……」
告白の、と言った瞬間、永人が俺を睨んだ。
「いま、話すの? 本番前なのに?」
ため息を吐きながら、手に持っていたアンケートを机に置いた。
「あ、ごめん。収録が終わったら、少し時間もらえないかな?」
「わかった」
それから、一言も話す事なく収録が始まってしまった。
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