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第23話 純斗の出した答え③
「同情なら……」
「同情じゃない! この気持ちが、永人と同じ気持ちなのか、わからないけど」
「何言ってんの? 純斗は女性が好きなんでしょ? だったら、男の俺に……」
「ただ、永人のことを考えれば考える程、胸(ここ)がすごく痛いと言うか。気づけば、永人のことをずっと考えていた」
「それは、俺に告白されて、その返事をどうするか、ずっと考えていたからでしょ。告白されたから、意識し始めた。ただそれだけの感情に過ぎないよ」
永人の投げやりな言葉が刺さった。
“気になる”これが一番しっくりくる言葉だった。
確かに、永人の言う通り、意識し始めて勝手にそれが“好き”と勘違いしているだけかもしれない。
「曖昧な答えでごめん。でもね、永人がこんな俺でいいって言ってくれるんなら……」
気持ちの整理もなかなかつかないまま、曖昧な答えだったか。
ただ、同情ではないことは誓える。
決して永人が可哀想だからとか、断ったら気まずくなるとかではない。
この1週間、断ろうと考えていたけれど、ふと頭を過ぎるのは永人の笑顔だった。
俺の言葉を聞いた永人は、10秒間固まっていた。
「本気で言ってんの?」
俺は真剣な顔で、永人の目を真っ直ぐ見た。
「うん。確かに、一度は断ろうと思ったのも事実。でも気になるっていうのも事実。自分の気持ちが曖昧なまま、恋人関係になることは、永人に対して失礼だと思っている。それが逆に、永人を困らせる原因になるのもわかってる」
「でもさ、純斗は、男が好きな訳じゃないんでしょ?」
そう、男が好きな訳ではない。でも……。
「相手が永人だからかな? 永人だから、そういう恋人関係になってもいいなって思うのかもしれない」
永人の大きな目に涙が溢れそうになっていた。
指で拭うと、吸い込まれるように綺麗に流れてた。
「俺だからって、嬉しいこと言わないでよ」
フワフワした答えでごめん、と言うと、わたあめみたいだね、といつもの永人の笑顔が見れた。
「じゃぁ、正式に“付き合う”じゃなく、(仮)にしとく?」
それでいいのだろうか?
「今、それでいいのか、って思ったでしょ。純斗が……1週間俺のことを、必死で考えてくれたことが……正直嬉しい。気持ち悪い、って思われていると思っていたから。(仮)でもいい。俺と一緒にいて、徐々に本当に好きになってくれたら。それで、(仮)が取れてくれれば」
無理に微笑んで言ってくれている永人の頭に手を置いた。
その上に永人が手を重ねた。
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