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第41話 レコーディング⑦

 レオンと話している永人の姿が見えた。 3人も収録が終わったらしい。  明後日のオフに永人と出掛ける約束をしていたが、忙しくてどこに行くか決めていなかった。  クリスマスは終わってしまったから、街中も正月モードに突入している。 クリスマスなんてあっという間に過ぎてしまう。  永人、ちょっといい?、と手招きの仕草をして呼んでみた。  「明後日の事なんだけど。どこ行くか決めてなかったじゃん」  永人が少しムスッとした顔で、海、とだけ答えた。  「海!? この寒いのに? 真冬だよ? 12月だよ!?」  廊下にいたスタッフが振り向くくらい馬鹿でかい声量を出してしまい、うるさい!、と永人が俺の口を手で塞いだ。  「声デカい! 別に海に入るなんて言ってないでしょ。冬の海を一緒に眺めたいなって思っただけ」  もっと夜景が見えるところとか、買い物などの答えを想像していた。 仮にもクリスマスデートという名目で海は流石に想定外だった。  「いや、永人が行きたいならいいけど……。ってか、なんか怒ってない?」  「怒ってない」  そう言いながらも、永人の頬は膨らんだままだ。 朝早いから、機嫌が悪いのだろうと、深く突っ込まないようにした。  「じゃ、また連絡するね……?」  うん、と短く返事をし、みんながいる控え室に入ってしまった。  なにかしたのだろうか、と自分に問いかけたが、全く心当たりがない。 最近、連絡ができていなかったせいか。 ただ、お互い忙しかったら出来ない事はよくある事で、それは、永人も理解してくれているはずだが……。    明後日、永人が笑ってくれたらいいな。

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