43 / 53

第43話 クリスマスデート②

 楽しかったんだね、と不貞腐れ声でまた窓に目をやった。  「なぁ、一昨日もそうだったんだけど、機嫌悪いよね? 俺、何かしたかな。折角、オフの日に出掛けるんだからさ、機嫌悪いのやめない? 何かあるんだったら言ってよ。黙って不貞腐れてもわけわかんねーし」  純斗が……、と今にも消えてしまいそうな声で何か言ったが、聞き取れるはずもなく。  「聞こえない。何?」  もう!、と永人が自分の太ももを叩いた。  「純斗が楽しそうだから! 音弥の事を話してる時の純斗の顔が楽しそうだから! 2人で仲良く歌合せしてるのも見ちゃったし……」  それに、と続いけた。  「レコーディングの控え室の、お弁当の時だって」  お弁当に全く心当たりがなかった俺は、黙って永人を見たが、永人は目をそらした。  「レオンがお弁当持って純斗に駆け寄った時、嬉しそうな顔してた」  それがその……、とゴニョゴニョ言っている。 窓に向かってずっとゴニョゴニョ言って表情は読み取れないが、これはひょっといて。  「まさか、嫉妬? だから、機嫌悪いの?」  目を真ん丸くして、こっちを見た永人の耳が段々赤くなってきた。  「そ、そ、そんなんじゃないし!」  「いや、そうでしょ。耳赤いよ?」  耳を指摘すると両手で隠した。 そして、俯いたまま動かない。 なんだか可愛いと思ってしまい、もっといじめたくなってしまった。  ちょうど信号は赤になり、永人の名前を呼んだ。 顔が上げきる前に、永人の唇に触れるだけのキスをした。  口をパクパクさせている永人に、意地悪く口角を上げて笑った。  青信号に変わり、車を走らせた。 横目で永人を見ると、耳が更に赤くなっていた。

ともだちにシェアしよう!