11 / 50
3.ケイとアンリ (2)
予約枠をオープンすると、翌週の火曜日の夜に、さっそく一件目の予約が入った。
ケイはベッドに寝転がって、スマートフォンのカレンダーアプリに自動反映された予約の表示をただぼんやりと見つめた。
今日は金曜日だから、と、指を折って日数を数えてみる。
そんなことをしていると、突然電話のコール音が鳴った。ケイは驚いて画面の表示を見ずに、通話ボタンをタップしてしまった。
「あ。……」
しまった、と思って短く声を漏らす。
もう通話が繋がってしまっているので、急いで耳に当てた。
『ケイト?』
耳介に飛び込んできたのは、アンリの声だった。
「あ……、うん、」
ケイは穏やかなアンリの声に、ほっとしながらうなずいた。
『いま、電話してても大丈夫?』
「だいじょ ぶ、」
寝転んだままだと声が出しづらくて、ケイはむくりと上体を起こした。
『明日、会えないかな?』
「あした、」
『何か予定ある?』
ケイは「ない」と答えた。
『じゃぁ会える?』
会ってどうするんだろう、とは思ったものの、会えないわけはないので、ケイは、うん、とうなずいた。
『良かった。どこで会おうか。こないだ会ったカフェから、ケイの家近い?』
「うん、近い、」
アンリが相手でも、やっぱり電話は苦手だなと思いながら、ケイはたどたどしく返事する。
『じゃぁカフェの前で待ち合わせしよう』
さっきまで仕事のことで頭がいっぱいだったケイは、今度は、アンリとの約束のことで頭がいっぱいになった。
ともだちにシェアしよう!