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3.ケイとアンリ (6)
***
週明けの火曜日、しばらく休んでいたせいか、どうやって客の相手をしていたのかを、ケイは忘れかけていた。
初めて知らない男の人に抱かれた時のような、気味の悪い不安が胸中をうずまいていて、ホテルへ向かう足取りは重かったが、予約をすっぽかすわけにもいかない。
指名をくれた客は、もともとケイを買っていた常連だったが、ケイは客の顔と名前を覚えるのが苦手だったので、予約者の名前を見てもピンと来なかった。
「久しぶりだね。しばらく休んでたよね?」
会話を始めてみても、以前この男とどんなセックスをしたのかは思い出せない。
ケイは覇気もなく、「はい」とうなずいた。
男はケイと会話を続けるのを諦めたようで、すぐにベッドへ誘うと、自慰をしながら自分で後ろを慣らして見せろと言ってきた。
ケイは全身が嫌悪感で満ちていくのを感じながら、衣服を脱いで裸になると、男の前で足を開いて見せ、のろのろと自身の下腹部へ手を伸ばした。
三日前の土曜日は、アンリが家に来て、他愛もない話をして過ごしていた。それなのに今日、いったい自分は何をしているんだろう、とケイは奇妙に思う。
「反応悪いねー」
なかなか興奮しきらないケイの様子を見て、男はじれったそうに言った。ケイが諦めてくれたのかと思って手を止めると、たまご型の小さなローターを手渡された。
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