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3.ケイとアンリ (7)
「中にこれ入れてから、続きして見せて」
遠隔でスイッチを切り替えられるタイプのものらしく、男の手にはリモコンが握られている。
「ほら、早く」
時間に限りがある中、客がホストを気遣うわけもなく、心無い催促の声をかけてきた。
ケイは不意に、泣き出したいような、悲しい気持ちになった。ぎゅっと唇を噛みしめて、その感情の衝動を堪える。
それからおもむろにローターを手に取ると、常備しているローションで濡らしてから、自分の後蕾にあてがった。
急に入れられても大丈夫なように、客のところへ来る前に準備をしてくるので、小ぶりのローターはあっという間にケイの中に収まってしまう。
久々の異物感に、ぞわぞわと下腹部が疼くのを感じ、吐き出した呼気が僅かに熱を帯びた。
男はまだ何もしない。
ケイは仕方なく、もう一度、自分自身を扱きはじめた。
少しずつ体温が上がって、体内はケイの意識とは無関係にローターを締め付ける。
「ん、……」
しかし快楽はまだ緩やかだった。
ケイの体は少しずつ、セックスという行為の感覚を取り戻してゆく。
そのとき唐突に、男がローターのスイッチをオンにした。
「――……ぁんっ!」
油断していたケイは、思わず大きく声を上げてしまう。
振動は弱く、かえって腰が揺らいだ。
「手、止めないの」
男はローターのスイッチを止めて、叱るような口調で言った。
「あ……っ、だって、」
ケイは中途半端に感じた状態で、ハー、ハー、と荒い呼吸を繰り返しながら、すがるように男を見つめた。
「そんな顔してもだーめー。がんばらないとずっとこのままだよ」
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