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3.ケイとアンリ (11)

 目的の駅で電車を降りて、アンリの先導でたどり着いたところは、ワンフロアすべてが書籍で埋め尽くされている、大型の書店だった。  アンリはすぐに高校生向けの参考書がある棚を見つけて、目的の書籍を手にとった。 「ケイトは、欲しい本とかない?」  どうせ読めないし、と思って、ケイは、うん、とうなずいた。 「せっかく来たしちょっと見て回る?」  アンリの提案に、ケイは同意する。  本がぎっしりと並んだ背の高い本棚を、きょろきょろと見渡しながら、ケイはアンリの背中をついて歩いた。  ふと、料理本の並ぶコーナーが目に入って、ケイは思わず足を止めた。 休んでいる間に自炊はずいぶん上達していて、仕事を再開してからも続けている。 出来ないことが多かったケイは、新しいレシピを作れるようになることが嬉しかった。 「ケイトって、料理するの?」  アンリは立ち止まったケイの横に来ると、意外そうに言った。 「練習、してる、の、」  ケイは何気なく、平積みされている本を手にとってめくってみる。写真が細かく載っていて、ケイにもわかりやすい。 「そうなんだ。偉いね」  偉いね、なんて、褒められると思っていなかったので、ケイは急に恥ずかしくなって顔を火照らせた。 「それ、買ってく?」  ケイはこくん、とうなずいた。

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