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4.キス (6)
ベッドの上に体を下ろされると、ケイはうつ伏せになり、真っ赤に染まった顔を隠した。
アンリは何も気にしていないような素振りで、ケイの頭を撫ぜる。
「なんかちょっと髪濡れてない? シャワー浴びた?」
ケイは枕に顔をつけたままでうなずいた。
「熱あるときはシャワーだめだって、教えてもらわなかった?」
そんなことは知らない、とケイは思ったが、相変わらず喉がヒリヒリと痛くて声は出ない。
「こっちにドライヤー持ってきたら乾かせるかな、」
アンリは独りごちて、いちどベッド脇を離れて洗面所からドライヤーを持ってきた。
ベッドの近くにあるコンセントにプラグをさして、枕を抱えてうつ伏せになったままのケイの頭に、ドライヤーの温風を当てる。
ずっと寒気がしているケイは、その温かい風にほっと力を抜いた。
ケイが緊張を解いたのを見計らったように、アンリはケイの髪を手で梳きはじめた。
頭を触られるのが気持ちよくて、ケイのまぶたはうとうとと重くなってゆく。
ケイが意識を手放しかけたとき、ドライヤーの音が止まった。
そのままアンリの手も離れていくかと思っていたら、首の後ろのあたりをくすぐるように触られて、ケイは「う、」と掠れた喉から声を漏らした。
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