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5.我侭 (9)
一時間もたつと、カズキが言ったとおり、ボックス席はぐちゃぐちゃになっていた。
ケイの横で淡々と焼酎を飲んでいるカズキは、完全に傍観に徹している。
始まる前にレイが言っていたシキという男性は、乾杯の十五分くらい後にオードブルを持って店に到着して、手伝いに入っていた。
「レイ、あとシキにやらせときゃいいじゃん。こっち来て飲も、」
カウンターの内側に入って、氷を追加しながら、カズキがレイに呼びかけた。
「あ、レイさん、行って大丈夫ですよ」
シキもテキパキと動く人で、大騒ぎしている集団から飛び交う、ビール! だの、テキーラいくぞ! だの、オーダーなのか何なのかわからない大声を受け止めて、ドリンクが途切れないようにちゃんと行き渡らせている。
「ん、ありがと、」
レイはシキに短く声をかけてから、カウンターへ戻ってきた。
カズキが座っていたチェアのひとつあけたところに腰を下ろす。
「おつかれー」
と、カズキが声をかける。
「何飲む?」
「んー、ビール」
レイが答えると、カズキはかしこまりました、と冗談めかして請け負って、冷えたビールグラスを取り出した。
それから慣れた手つきでビールサーバーを捻る。
「ケイは? 何がいい?」
レイにビールを渡しつつ、ケイの残り少なくなったグラスに目配せる。
ケイはどうしようかな、とちょっと考えた。
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