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6.心の場所 (1)
「着いたよ、ケイ、」
モトイの声に、ぐっすり眠ってしまっていたケイは、んー、と声を漏らした。
「起きれる?」
うっすらとまぶたを開けると、視界にモトイの顔があった。
「う……?」
なんだっけ、と、記憶が飛んで、ケイは首をかしげる。
モトイはその様子を見て笑いながら、「マンション着いたよ」と、もう一度説明した。
ケイはようやく状況を思い出した。
ベルトを外して車を降りると、ひゅうと風が吹いて、寒さに身が縮む。
足早に駐車場からエントランスへ向かい、オートロックを解錠して中へ入った。
エレベーターで四階へ向かう。
モトイも部屋までついてきてくれるようで、一緒にエレベーターを降りた。
「え、」
そこで、ケイは驚いて立ち止まった。
ケイの部屋の前に、膝を抱えて座り込んでいるアンリの姿がある。
ふたりが廊下を歩く足音に気づいたのか、アンリはおもむろに顔を上げ、その視界にケイを写した。
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