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6.心の場所 (2)

 まったく予期していなかった事態に、ケイは混乱して、助けを求めるようにモトイを見上げた。 「ったく、なにこれ、どういう状況?」  モトイは呆れたように肩をすくめた。 ケイはわからない、という意味を込めて、頭を振る。 「アンリ、だったっけ。大丈夫か? いつから待ってた?」  モトイがアンリの前に屈むと、アンリは抱えた膝に顔をうずめた。 ケイはその様子を見ながら、モトイがなぜアンリの名前を知っているのか不思議に思って首をかしげた。 「連絡した、のに」  アンリからくぐもった声が聞こえた。 「とりあえず、」 と、モトイは口を開いた。 「冷えきってるから、部屋上がってシャワー浴びてあったまってからだな」  えっ、とケイは慌ててモトイの傍に駆け寄った。 そろそろと手の甲に触れる。氷のように冷たくなっていた。 「アンリ、」  ケイは不安のために眉尻を下げて呼びかけた。 「なんで、連絡してこないの。電話も、出ないし、」  ケイとしては、今はそれどころではなく、モトイが言ったとおり、早く部屋に入って温かいシャワーを浴びてほしかった。  しかし、アンリが部屋の前に座り込んでいるので、ドアを開けられない。 「アンリ、立てる、……?」 「ケイトのあほ」 「え、」  心配をよそに悪態をつくアンリに、ケイは目を丸めた。

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