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【番外編】運命の番・新婚初夜 - 第2話

 神に誓い、国民からも祝福されて結ばれた。結婚式の感激を思い出し、二人は熱を込めて愛し合い始めた。身を飾るよそよそしい布を取り去れば、馴染みのある、愛しい人の素肌が現れる。互いの首筋や肩に鼻先を埋め、滑らかな触り心地や、恋しかった匂いと温もりを心行くまで味わう。アーロンはリオを自分の膝の上に乗せ、向かい合う形で抱きしめる。 「リオ。俺のとお前の、一緒に扱いて」  若い二人の中心は、既に昂っている。リオは、アーロンの言葉に頷くと、両手を使って二本の屹立をまとめて上下に扱き出す。先端から溢れ始めている蜜が、リオの手による刺激で増し始め、滑らかになる。二人は甘い呻き声を上げた。  アーロンの手は、リオの白い双丘を撫でおろし、あわいへと忍び込む。 「ここも、もう濡れてる」  後ろも興奮と快感で濡れ始めていることを口にされ、リオは恥ずかしさから、いやいやとかぶりを振る。そんな初々しい仕草に、アーロンは可愛くて堪らないと言わんばかりに目尻を下げ、指を差し入れる。 「……すごく柔らかいな」  アーロンに一度貫かれただけのそこが、あっさりと指を受け入れたことに、アーロンは軽く驚いている。リオは慌てて言い訳した。 「侍女たちは、僕が初めてだと思ってるから。初夜が苦痛じゃないようにって、準備してくれたんだ。男性オメガの場合、ヒートじゃないと、裂けたりして大怪我することもあるんだって」  バツの悪そうな表情を浮かべているリオの額に、アーロンは優しく口づけた。 「準備、大変だったんだな。ありがとう、リオ。ちゃんと気持ち良くなってもらえるように、俺、頑張るからね」  その指先は更に優しく、後孔の内側へと忍び込み、リオの良いところを探る。 「……っ、あっ」  控えめな声を耳ざとく拾い、アーロンは、花嫁に丁寧に快楽を与える。感激と興奮で、二人の体温があがるのは早い。香油を塗られていたとは言え、リオの内壁は自身の蜜でしとどに濡れる。そこを指で愛撫されるのだから、堪らない。リオは最初こそ声を抑えていたが、今や絶え間なく甘い声をあげ、アーロンにくったりと身を委ねる。二人の屹立を愛撫する手は、時折思い出したように軽く動くだけに過ぎない。もはや後ろの快感に翻弄されていることは、蕩けた表情からも明らかだ。 「中に入っても良いか?」 「……うん」  言葉少なに答える花嫁の後孔に切っ先を宛てがうと、花婿は、掴んだ花嫁の細い腰をゆっくり引き下ろす。 「ん……っ。は、あん……」  花婿は、注意深く花嫁の反応を見守りながら結合をじわじわと深める。その花嫁はと言えば、眉をひそめて悩ましげな声をあげている。恥じらいながらも快感に悶えるリオの姿は、アーロンを更に猛らせる。 「ああ……、リオ、素敵だ。良いよ、もっと乱れて」  アーロンは自分の身体を上下、前後に揺する。必死に首根っこにしがみつくリオに、アーロンは囁いた。 「俺を馬だと思って、(ぎょ)すように動いてみて」  リオはコクコクと頷き、自ら腰を動かし始めた。アーロンの愛しい昂りが内壁を擦りながら、行き来する。色んな角度で抉られるうちに、リオは、自分の良いところに当てるコツを会得した。甘い飴玉を含んだ子どもが、夢中で飴をしゃぶるように、ひたすらに腰を振る。体内は、ますます熱くなる。後孔は、まるで溶けてしまったかのように柔らかく、蕩けている。 「ああ……っ! ああ……、すごい。気持ち良いよ、アーロン」 「さすがリオ。すぐコツを掴んだな。もっとスピードを上げよう」  若駒と青年が人馬一体となって野を駆けるように、二人は快感を追い求めた。もはや控えの間の臣下たちの存在すら頭から抜け落ちた。本能の赴くまま、甘い喘ぎ声をあげ、互いを貪り、そして与え合う。 ***  若く初々しい新婚カップルが睦み合う物音を微笑ましく見守っていた控えの間の面々だったが、少し前から、リオのあげる声が、嬌声というには切羽詰まり始めたことに緊張感が走った。 「ご様子がおかしくないでしょうか? 一度、お声を掛けるべきでは」 「しかし、新婚の閨に水を差すのは……」  控えの間の一同は、頭を寄せ合い心配する。そこへ、辛うじてナイトガウンを逞しい身体に引っ掛け、乱れた髪や流れる汗もそのままのアーロンが、気だるげに現れた。アルファのフェロモンが漂っていることに気付いた者もいたが、不遜なので口をつぐんでいた。 「リオのヒートが始まった」  口数少なに告げると、テーブルの上の水差しからグラスになみなみと水を注ぎ、一気に飲み干す。 「リオ様は、これからアーロン様と番になられるのでございますね?」  恐る恐る、リオ付きの侍女が尋ねると、アーロンは頷いた。 「ああ。だが、もう少し、ヒート中のリオを堪能してからな。良い匂いがして、色っぽくて、最高なんだ。番ったら、もうこんなに激しいヒートは起こらないのかと思うと、すぐ項を嚙むのが勿体ない気がしてな」  ニヤリと唇の片端を上げ、流し目を送るアーロン自身からも壮絶な色気が漂っている。年嵩の侍女ですら、頬を赤らめるほどだ。 「この後、数日はリオとベッドで過ごすと思う。食べ物や飲み物を適当に差し入れてもらえるとありがたい。  ……トマス、マテオ。俺たちの予定は問題ないか?」  アーロンがリオと自分の一番の臣下に向かって尋ねると、有能な彼らは、すぐさま恭しく頷く。 「ご婚儀の後は、お二人でゆっくり過ごされたいかと思いましたので。領地巡りへの出発まで、数日の猶予は織り込んでおります」 「さすがトマスとマテオだ。俺たちのことを良く分かっている」  数日の自由を手にして目を輝かせたアーロンは、食べ物や飲み物の入った籠を受け取り、いそいそと寝室に戻っていった。 「アーロン陛下とリオ陛下の婚姻の成立を認める。以降は、お二人の身の回りのお世話をする者だけが残るように」  大司教は厳かに宣言した。一同が神妙に頷いたところで、彼はトマスとマテオにだけ、こっそりと耳打ちした。 「お若く、精気に満ち溢れたアーロン殿のことだ。簡単には項を噛むまい。リオ殿も、華奢なオメガとは言えひとかどの騎士だ。抱き潰されるには、だいぶ時間が掛かるであろうな。老体にはきつい。私はこれで失礼するよ」

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