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第15話
一機は威に送るからと碧唯の写真を撮ると、支度をして迎えに来た車で仕事に行ってしまった。
一機を外で十哉と見送ると、入れ違いで宅配便がやって来る。
小さな段ボール箱を受け取ったが、碧唯は配達員の目が気になってしまっていた。
「タケルの荷物かぁ。そういえば君が来たら身につけさせたいモノがあるって言ってたなぁ……」
リビングに荷物を置くと、碧唯は十哉に誘われて2階で一緒にオンラインゲームをする事になった。
「身につけさせたいモノ……?」
何だか嫌な予感しかしなかった。
「あっ、ヤバいものじゃないかって思ったでしょ?きっとそうだろうね、はははは……」
明るい声で笑われ、碧唯はどうしていいか分からなくなる。
「そういえば、子ブタくんはずっと家の中で過ごして来たんだよね?学校の勉強は家でしてたの?」
「あ……はい、勉強は好きだったのでオンラインで。一応高校卒業程度の勉強まではしました」
ゲームをしながら、十哉と他愛ない話をする。
碧唯にとって、小学生以来の事だった。
「それは立派だね。俺も家に引きこもってた時期あったんだけど、身体を鍛えるかこうやってずっとゲームやってたんだよ」
「そうなんですか……」
(どうして引きこもってたのかな、トウヤさん。こんなに良い人だけど、ボクみたいにいじめられてたのかな……)
かなりのスピードで敵を倒していく十哉。
その腕前はかなりのものだと碧唯は思った。
「俺はね、元々は野球一筋だったんだ。プロ野球選手になりたくて、中学までがむしゃらにやってきた。そしたらさ、腕がおかしくなっちゃってもう野球やっちゃいけないって医者に言われたんだ。俺、ショックで円形脱毛症になって、髪の毛が全部抜けた後で生えて来なくなった。で、それを誰にも見られたくなくて引きこもってずっとゲームしてたってワケ。でも、そのお陰で今の仕事に就きたいって思ったから、今はすごく良かったって思ってる」
聞いてもいないのに話す十哉の話を、碧唯は黙って聞いていた。
「君も何か見つけられたら……って思ったけど、その時はタケルに相談しなきゃダメだろうね」
「ボクは……別に何もないです。ゲームもするのは大好きだけど、やるだけでいいし……」
「そっかぁ。じゃあここでいっぱい色んな経験すればいいよ。俺たちみんな変わってるからさ」
「はぁ……」
笑顔の十哉。
碧唯にはそれが少しだけ眩しく感じた。
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