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第30話
「ただいまー。打ち合わせ、すぐ出来そうね」
威とお風呂に入り、リビングで髪の毛を乾かしてもらっていると一機と十哉が帰宅する。
「えぇ、ちゃんと終わらせておきまし
た。……君たち、あまり僕の可愛い子豚ちゃんに刺激の強いモノを見せないで下さいね。この子は僕にとって特別な存在なんですから」
「ハイハイ、ご馳走様です。以後気をつけますね、タケル様」
威が釘を刺すと、十哉がヘラヘラしながら応える。
絶対にそのつもりはなさそうだと碧唯は思った。
「で、どんな風にする?」
3人が話している間、碧唯はドライヤーを弱くし、音があまり出ないようにして威の長い髪を乾かしていた。
「aoiちゃんは聴覚障害のある控えめな女の子、という設定を考えていました。我々がスカウトしてそれを承諾してくれたものの、写真集やカズキのブログでしか顔を出さない。そうすれば子豚ちゃんも危険な目に遭わないのではないかと思うんです」
「ここに押しかけられた時の心配はあるけど、それなら何とかなりそうね」
「カズキはどう考えていましたか?」
「ワタシは田舎から上京して親に隠れて活動してる……っていう設定を考えていたの。タケルの案、すごくいいと思うわ」
こうして、碧唯は『モデルに憧れて上京してきた聴覚障害のある女の子』としてaoiを演じる事になった。
「子豚ちゃん、安心して下さい。君が公の舞台に出る事はありませんから」
不安そうにしていると、威が笑顔で頭を撫でてくれる。
「そうと決まればマスコミ向けに写真を用意しなきゃね。タケル、いつ時間取れる?」
「明日なら1日オフにしていますので、いつでも構いませんよ」
「分かった。ワタシ、午前中仕事があるから終わり次第ね。あとは……写真集の製作をするとして、どこで撮影やる?」
「今なら海外に行っても問題ないんじゃねーの?そこまで認知されてないだろうし」
「ならワタシ、ヨーロッパがいい!!しばらく行ってないし」
(ヨーロッパ……)
ほとんど外に出た事がないのにいきなり海外に行くかもしれないなんて。
碧唯は恐怖を覚えた。
が、一機の強い希望により、写真集のロケ地はイギリスに決まってしまっていた。
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