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第32話
「朝から一生懸命お仕事に励んでくれて嬉しかったですよ」
後始末をすると、威が笑顔でそう言って頭を撫でながらキスをしてくれる。
「よ……悦んでもらえて良かったです……」
「ご褒美に君が食べたいものを作ってあげますね。朝ご飯、何がいいですか?」
「フレンチトースト!前に作って頂いたあの美味しいフレンチトーストをいっぱい食べたいです!!」
「分かりました。冷凍庫に食パンが2斤あるはずですので、今日はたくさん作ってあげられますよ」
「わぁ……ありがとうございます!!」
あの美味しかったフレンチトーストをたくさん食べられる。
碧唯は幸せな気持ちになった。
虹の写真が中央にデザインされたライトブルーのTシャツワンピースと黄色の透けた生地のTバック。
恥ずかしい格好なのに、外に出ないなら……と、碧唯はこの服装に慣れ始めていた。
「今日もとてもよく似合っています」
髪をとかされて威と同じくポニーテールにされると、額にキスされる。
「ありがとうございます……」
「子豚ちゃん」
「はい」
ぎゅっと抱きしめられると、碧唯はその鼓動を心地よく感じた。
「君の顔、だんだん明るくなってますます可愛くなっていますよ。無理矢理連れて来てしまいましたが、君がそんな風に変わっていってくれて、本当に嬉しいです」
「……ご主人様……」
その背中に、碧唯は手を伸ばしていた。
「ボク……まだよく分からないけど、ボクなんかの事であなたに悦んでもらえるのは嬉しいです……」
「……君は君自身の価値を分かっていません。ですが、それもまた僕の心を掴んで離さない君の可愛いところです」
ちゅっ、と、威は音を立てて碧唯の唇にキスをすると、笑顔を浮かべながらその手を頬に伸ばしてくる。
「さ、朝ご飯を食べましょうか。楽しみにしていて下さいね」
「はい……!!」
碧唯も威に笑顔を返していた。
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