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第39話

4人での暮らしから3ヶ月。 碧唯は一機に教わったスキンケアをかかさずこなし、元々の美肌に磨きをかける努力を続けていた。 10歳年上の3人にもだいぶ打ち解けられた碧唯は、教えてもらって家事も手伝うようになっていた。 また、週に1度、一機のブログに顔を出したりもして、『aoi』としても活動していた。 イギリスでの撮影を間近に控え、碧唯は今日、威とパスポートを取りに外に出ていた。 「これで来週の準備はほぼ完璧ですね」 「はい……」 お揃いのポニーテールに黒のキャップとマスクにサングラス。 白いTシャツにジーンズもお揃いで、違うのは碧唯が首輪をしているという事だけだった。 威との甘く刺激的な毎日で、碧唯は威への想いを募らせていた。 「あぁ、そうでした、飛行機に乗る時は首輪を外していいですが、代わりに何か別の物を身につけてもらおうかと思いまして、これからお買い物に行きましょう」 「は、はい……」 周りの目を気にせず、堂々と恋人繋ぎで街を歩くふたり。 恥ずかしかったけれど、碧唯は嬉しい気持ちで胸がいっぱいだった。 威が連れてきてくれたのは、小さなアクセサリーショップだった。 「いらっしゃいませ……あら、タケルちゃんじゃない」 「お久しぶりです、キヨシさん」 中には店主らしい小太りの男性しかいなかった。 威はサングラスとマスクを外すと、その男性に挨拶する。 碧唯も威の真似をして男性に会釈していた。 「わぁ、お肌がすごくキレイ!!顔もめちゃくちゃ美人さんね」 「ありがとうございます。恋人よりもずっと大切な、僕の可愛いペットなんです。ほら、首輪してるでしょ?見た目もですが、性格も僕の言う事をよく聞いてくれて、とても可愛いんですよ」 「も〜。来て早々ノロケ?タケルちゃん、よっぽどこの子が気に入ったのね」 「えぇ、そうなんです」 碧唯の肩を抱きながら話す威。 (恋人よりもずっと大切な、可愛いペット……) 人前で堂々と言われて、碧唯は頬が紅くなっていた。 「それで、今日はどうしたの?この子にプレゼントとか?」 「えぇ、何かアクセサリーをと思いまして」 「それならコレなんてどう?昨日買ってきたばかりのモノなんだけど」 そう言って、男は店頭のショーケースからひとつの指輪を取り出してふたりに見せる。 「サイズが合えばだけど、アレキサンドライトっていう珍しい石がとってもキレイなの。今は青っぽく見えるけど、お日様の下では紫に見えるのよ。この色がすっごく気に入っちゃって、買い手がつかなかったら自分用にしようと思ってたのよね」 シンプルなシルバーのタンクリング。 その中央に嵌め込まれたアレキサンドライトは確かに綺麗な輝きを放っていた。 「……ちょっと貸して頂けますか?」 「えぇ、どうぞ」 その指輪を男から受け取った威は、碧唯の左手をとると薬指に嵌める。 「……うーん、少し緩いですね。中指で試してみましょう」 隙間が出来てしまう事を確認した威は指輪を引き抜くと隣の指に嵌める。 すると、こちらは隙間もなく、ちょうどいい大きさだった。 「あら、似合うじゃない」 「えぇ、色白の子豚ちゃんにピッタリです。子豚ちゃん、よく似合っていますよ」 初めての指輪。 婚約指輪をプレゼントされたみたいで嬉しかった碧唯だったが、その金額に申し訳ない気持ちにもなっていた。

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