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第46話
「子豚ちゃん、他に僕にお願いはありますか?」
「あの……たまに、本当にたまにでいいのでボクの事、名前で呼んで欲しいです。カズキさんやトウヤさんたちみたいに名前で呼びあってみたいです」
コテージまでの帰り道。
ふたりは海岸線を恋人繋ぎをして歩いていた。
「ふふっ、子豚ちゃん、カズキとトウヤに嫉妬してるんですか?子豚ちゃんの言い方ですとそんな風にも聞こえますよ?」
「そ、そんなつもりはないんですけど……でも、もしかしたらそうなのかもしれないです……」
「可愛い」
威は足を止めると、碧唯にキスをする。
「ちょっと!そこで何イチャイチャしてんのよ!!タケル、豚見つけたんなら連絡しなさいよ!!」
向こう側から一機と十哉のふたりが走ってくると、一機がふたりを一喝する。
「あぁ、すみません、すっかり忘れていました」
「豚!何その顔!!明日撮影なのに何でそんなに目が腫れてんのよ!帰ったらマッサージするからね!!」
「ご、ごめんなさい……」
その日の夜、一機にフェイスマッサージをされた碧唯は、夜更かし防止の為にと言われて威と別々の部屋で寝る事になった。
翌朝。
同室で寝ていた一機に叩き起された碧唯は、朝食の買い物に向かい、そのまま朝食作りも手伝っていた。
「だいぶ魚捌くの上手くなったわね」
「ありがとうございます」
十哉に何度も教えてもらった魚の捌き方。
厳しい一機に褒められ、碧唯は嬉しくなっていた。
日本から持ってきたレンジでチンするご飯とインスタントの味噌汁を温め、魚のムニエルとサラダを一機と手分けして用意していると、威と十哉が起きてきて手伝ってくれる。
「んー、やっぱ日本人は米だな、米!!」
「このムニエル、美味しいですね」
「それ?豚が焼いたのよ。だいぶ上達したわよね」
「ありがとうございます!カズキさんのお陰です」
「ハハッ、子ブタくん、なんか良い顔になったね」
朝食をとった後、いよいよ撮影に向けて4人は動き出していた。
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