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正義の味方 2

 「ゲームをしようお前が勝ったなら、お前を帰してやるよ」  僕は言った。  僕は悪党が好きだし、希望を捨てない人間が大好きだ。  助かるチャンスを与えてやるのは趣味だ。  僕は拳銃を取り出した。  リボルバーだ。  六発の弾が入るシリンダーをくるくる回す。  「ロシアンルーレットをしよう。勝てばお前は帰れる。負ければ死ぬ。断ったらここにある道具でゆっくり殺す。生きていることを後悔する位の痛みを与えて殺す」   レイプ野郎には断る理由などなかった。  死ぬとしても惨殺は免れるのだ。  「僕が当たりを引いたとしても、ちゃんとあそこいる彼が、お前を解放してくれるから」 ガキを指さして言う。  一発だけ弾だけを入れてシリンダーを回した。  引き金を引けばいい状態にして、ほどいてやった右手に渡す。  六分の一の確率の死。  それでもソイツは腹は決めていたらしく、震えながら引き金を引いた。  カチリ。  吐息が零れる。  「良かったな」  僕は微笑み銃を受け取る。  撃鉄を起こしせは、自動的にシリンダーが一つ回る。  そして、僕もまた引き金を銃口を頭に当てる。  これで弾が出る可能性は五分の一の確率になった。  引き金を引く  カチリ。  僕も無事。  また男に銃を撃てる状態にして渡す。  これで四分の一の確率。  ソイツはガチガチ震え始めた。  僕はペンチを見せてやる。 しないなら拷問だ。  「くわっ、・・・かひひひ」  奇妙な声を上げて、男が目をむきながらそれでもソイツは引き金を引いた。  カチリ  涎さえたれていたが、男はやりとげたのだ。  なかなかエライじゃないかと僕は思った。  これで三分の一の確率。  僕はさっさと引き金をひく。      カチリ  弾は出なかった。  僕はにっこり笑った。  カタカタカタカタ  男の歯がカスタネットみたい鳴っていた。  これで二分の一の確率。  死ぬか生きるかの二択。  さあ、どうする?   どうする?  お前は引き金を引けるか?  男に拳銃を渡した。  握る拳銃がブルブル震えていた。    「ぶるし・・・なかな、かなか」   もう何言っているのかわからないし、子供みたいに泣き叫んでるし、涙と鼻水だけでは足りず、ズボンの股から染みが広がる。  失禁していた。  ちょっといい男がここまで崩壊するのって、たまらなくいい。  僕はこの上なく楽しかった。  「引かなきゃ、ほら」  僕は優しく言った。  「はうっ!はうっ!」  そいつは真っ赤な顔をして叫ぶ。  気合いはかけても、引き金をひけないのだ。  所詮この程度だ。  がっかり。  まあ所詮レイプ野郎だしな。  と、思ったら、コイツ銃口を僕にむけた。   生きる、死ぬの二択だったのに「殺す」を付け加えやがった。  そうか、どうせ二分の一の確率なら僕を殺せる方か。  悪くない。  コイツ、いい、そう思った。

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