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正義の味方8

 「死体の側だぞ・・・何幸せそうなんだ」  一応言ってみる。  僕でさえ、ここでは優しくガキは抱けないのに。  コイツのがどうかしてるんじゃないかと思う。  拷問の後に、手酷く扱われて。  ここから、優しく僕を抱くシュチュエーションにはならないよね、絶対。  「あんたに触りたくて・・・俺はここまで来てしまったから、俺は今幸せだよ」  ガキは優しく僕に言った。  そうだった。  このガキは、僕の殺人現場で、死体を犯している僕に一目惚れした僕以上に狂ったヤツだった。  「俺はあんたがいればいいんだ」  ガキの言葉に目を閉じた。  お前は何を言っているのかわかっているのか。  僕はガキの背にまわした腕に力をこめた。    床に押し倒された。  身体を好きにさせてやった。  優しく、甘やかされる感覚は慣れない。  この世界で殺人鬼を甘やかし抱こうとするのはこのガキだけだ。  優しい手に撫でられ、優しく唇を落とされ、優しく舐められる、そんなシンプルな愛撫が心地良くて困った。  口でしたいと言うから、喉を犯されたくせにと呆れながらも許してやった。  僕がさせる時とは違う丹念さで、追い上げられた。    ちょっと触らせてるだけだ。     自分に言い聞かせる。  抱かれているわけじゃない。  少し触らせているだけだ・・・。  穴を舐めだした時は慌てて止めさせたけれど、指でそこを撫でるのだけは譲らず、そこの感覚を執拗に僕に感じさせながら、僕のを口で飲んでいた。  ガキは懸命にも指をそこにねじ込むような真似はしなかった。  僕が絶対に許さないのがわかっているからだ。  自分のをそれでも僕の太股に挟ませ、こすりつけ、それでもガキは幸せそうにイった。  僕もこすりあわされるそれで、声をあげてイった。   でもやはり、ガキに抱き込まれながらイかされるのは・・・妙な気分だった。  やたらと甘くて・・・ガキの中に溶かされるみたいだった。  僕に抱かれて泣かされてるガキのくせに。  僕にイかされながら、いやらしいことを僕の望むまま口にする、僕のメスのくせに。    腹立たしいのに、心地良い。  いいだろ、たまにだ。  たまに・・・コイツがこんなにしたがるんだから、少しくらい触らしてやってもいい。  また、言い聞かせた。  抱かれてるわけじゃない。  僕をイかせたガキが僕を抱きしめながらする、優しいキスに身を任せた。  もうしばらくだけ・・・。  こうさせてやってもいい。  僕はお前が・・・可愛いんだ。  「俺はあんたがいればいいんだ」  ガキがまたキスの合間に囁いた。  お前は・・・その言葉の甘さがわかってないから・・・・。  僕は自分の目を見られないように目を閉じた。  甘いキスは、口の中よりも、胸の奥を溶かすようだった。  椅子に縛りつけられた死体は、苦悶の表情を浮かべていた。  見開いた目は両目ともくりぬかれ、床の上に転がされていた。  大きく開いた口には歯が一本もなかった。  脚こそ斬られてはいなかったが両腕は斬られていた。  止血しながら斬られたことがわかるはずた。  切断面の上をベルトで括られているから。  斬られ腕はノコギリなどが並べられたテーブル上に無造作に置かれていた。  その腕には指がないことと、床に散らばる指に爪がらないことから、まず全の爪が剥がされてから、指を切り落とされていったことがわかるはずだ。  わかるヤツには。  この死体は僕の傑作だった。   恐怖が刻み込んである。  僕は僕が作った死体の隣りでガキの優しいキスに溺れる。  ガキは死体を見ない。  それはガキにはつらいことだから。  まるでそんなものはないかのように、僕を甘やかす。  ここはこの優しいガキには地獄でしかない。  そこに引きずりこんだのは僕。    だから僕は・・・ガキのために正義の味方になるしかないのだ。  そう、僕は正義の味方だ。    一応、これでも。  人間の味方という意味ではそうなんだ。    

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