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借り 5

 「精神操作系の捕食者?」  あの人が眉をひそめた。  俺もあの人の隣に座って話を聞く。  聞いてもかまわないとスーツが言ったから。  「友人が・・・情報屋も兼ねていたライターの男なんだが、不思議な男を追っていて、その結果姿をくらました。20人の死体が残る現場から」  スーツは言った。   「本当に追ってる男が捕食者なら、別に個人的に僕にお前がお願いにくることはないだろう」  あの人が不思議そうに言った。  まあ、そうだ。  捕食者に関することは国からあの人に一任されている。  そのために動くのをサポートするのかスーツの役目なので、いつも通り情報をこの人に 渡せばいいだけだ。  「捕食者かどうかわからないから本来勝手に情報はわたせない。まだ、その確認がとれていない・・・確認がとれる前に、確認をとるヤツが姿を消したから」  スーツは言った。  「・・・なる程、たんなるシリアルキラーなら管轄外になるから迂闊に手はだせないってことか。命令に背くなんてお前には出来ないしな、犬。僕が勝手に何をしようと、誰も僕には文句は言えない。僕に管轄などない。それに調べモノも僕は得意だしな」  あの人は薄く笑った。  スーツを「犬」呼ばわりするのは、スーツが命令に絶好だからなのだが、そんなスーツが命令違反になりかねないことに手を出すのが面白いと思っているんだろう。  「・・・どういう【友人】だ?お前がそこまでするとは」  あの人が楽しそうに聞く。  でも確かにそうだ。  これはスーツらしくない。  あの人に調査を頼むのなんてのはらしくなすぎる。  親友とか、大事な人なんだろう。   「抱いたのか?」  あの人はニヤニヤする。  とうしてそういうところに行くわけ?  なんで?  自分がそうだから誰もかれもが同性に興味があると思っているんだよこの人は。   スーツは何も言わなかった。  ええ、どうして?  「助けてやるから、僕には本当のことを言え。相手はお前が抱いた男なんだな?」    あの人は楽しそうに言った。  この人は本当に・・・。  スーツはしばらく黙り、苦々しくいった。  「・・・ああ、一度だけな」  スーツはとんでもないことを言った。  「ええっ!!!!」  俺が叫んだ。  あんた、ヘテロだったんじゃないのか!!  「・・・頼みこまれて一度だけ。断れなかったんだ」  スーツの言葉に一番動揺したのは俺だった。

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