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捕食者狩り 一刀両断 3
少年は見事な射撃姿勢をとった。
私が指導した通りの教科書みたいな膝撃ちだった。
少年の訓練は私が男に頼まれてしている。
闇稼業出身の自分ではクセが強すぎるから、と。
頼んだわりには嫉妬でうるさいのだが。
少年は良い生徒で優秀だ。
膝撃ち。
膝をついて狙う撃ち方だ。
そして、続けて三度撃った。
少年の射撃の腕はかなり上がってきてはいる。
のんびり歩く少女を撃ち抜くことはそれほど難しくなかったはずだ。
だが、少女への発砲は無意味だ。
二度目の手榴弾の時と一緒で。
少女は撃たれる前に、少年が引き金を弾く前に身体をコチラに向けていた。
おそらく少年の殺意に反応したのだ。
少女の手にした刀はジェルのように滑らかに宙で広がり、少女の腕を覆う巨大な銀色の盾になった。
少年が撃った銃弾はその盾に吸い込まれ、跳ね返された。
「何でも斬れる刀に何でも跳ね返す盾か」
男が呆れたように言った。
矛盾だ。
「どこの故事成語だよ」
男は言った。
こればかりは男に私も賛同する。
少女はこちらを見ていた。
気を引くことには成功した様だ。
ケガをした男は必死で逃げ続けていた。
だが、時間の問題だ。
私もこの男は諦めていた。
助けられない。
「あんたらはもういい、俺が助ける!」
少年は少女から目を離さないまま、叫んだ。
そしてそのまま屋上からライフルを担いだまま飛び降りた。
「バカが!!」
男が忌々しそうに言ったが、追う様子はない。
少年は屋上から次の階のベランダのフェンスにふわりと降り立った。
そしてベランダのフェンスを階段代わりに、トントンと軽やかな音を立てながら降りていき、瞬く間に、アスファルトの上に降り立った。
死ぬことがないから恐怖がないからこその出来ることとも言えるが、驚異的な身体能力だ。
さすがに元は将来を期待されていた陸上選手だ。
恐怖感のなさと、生まれもった身体能力と、努力。
少年の成長は恐ろしい程だ。
「・・・止めなくていいのか?」
私は男に聞く。
「止まらないだろ。あのバカは。とにかくガキがあの女とヤってるとこを見てから・・・僕があの女をどういたぶるかは考える」
男は憮然としたまま答えた。
男がこの上もなく少年を愛しているのは傍目からも明らかだが、だからと言って少年を守るわけではないことも、少年を愛していることを指摘されるのを指摘した人間を殺す程嫌がるのも知っている。
男と私は少年を見守る。
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