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捕食者狩り 一刀両断 4
少年と少女は向かい合った。
同じ年頃の二人。
恐らく同じ境遇の。
どちらも、少し前まで普通の人間として生きていた。
少女の軽やかな短い赤い髪がゆれた。
少年の少女への眼差しには痛ましさがある。
二人はまるで初めてあった恋人同士のように視線を絡ませあった。
少年は瞬時に反応した。
立ったまま銃撃を撃つ。
単発式の銃で続けざま二発撃てるのは訓練の成果だ。
撃ち終わった後、すぐに行動に移れる美しい銃撃姿勢もすばらしい。
少女は銃弾に盾を向ける。
ブワン
銀色に盾が光った。
弾は盾に吸い込まれるように向かい、弾かれた。
だが、銃弾に気を取られている間に、少年はものすごいスピードで少女へと跳躍力していた。
少年の蹴りが、少女の顔に飛ぶ。
少年は撃つと同時に銃を捨て、少女に襲いかかったのだ。
良い判断だ。
弾は5発。
全て撃ちきったからだ。
少女の顔に蹴りが当たり、少女は吹き飛んだ。
「女の顔を蹴りにいけるようになったか。・・・少しはアイツも成長したな」
男も少年を誉める。
甘いことには変わりないがな、とブツブツ付け加えながら。
確かに。
少し前の少年なら、女性に向かって蹴りを放つなどできなかっただろう。
少年は優しいのだ。
「そして、あの盾は銃弾などは自動的に吸い込むが、生身の攻撃はそうできないし、盾としている時はすぐに刀にはならないわけだ」
男は冷静に分析している。
少年は躊躇わなかった。
吹き飛ばされアスファルトの上に転がる少女の上に即座にのしかかる。
少女の盾がついている腕や肩を、両足をつかって押さえ、少女の顔面を殴りつけた。
刀も盾も使えない少女は、ただの少女でしかない。
ガツン
ガツン
ここからでも、骨と骨か当たる音が聞こえてきそうだ。
少女の顔が左右に揺れる。
右、左、右、左
少年は交互にパンチを繰り出していく。
少女の苦しげに開いた口から、血が飛ぶ。
殴られ、皮膚が切れたこめかみから、血が流れ、左右に殴られる衝撃で揺れる少女の顔から、少年の顔へその血か飛ぶ。
少年の拳は真っ赤にそまり・・・それでも少年はやめなかった。
少年が動く、少女が揺れる。
少年の吠える声、少女の悲鳴。
「アイツ・・・分かってきたじゃないか」
男か楽しそうに笑った。
少年が少女を殴っているのが楽しいのた。
こんな光景を楽しめるのはこの男位だ。
「僕は女は嫌いでね。男とは違う理由で痛めつけてやりたくなる」
男は楽しそうに少年が少女を殴りつけるのを見ていた。
「でも痛めつけるその先は男も女も同じだ。どちらだって、楽しめる」
男はニヤリと笑った。
少年はまるで少女を犯しているようだった。
そんな光景を楽しんでいるようだった。
この男は楽しむのだ、相手が男でも、女でも。
この男はそういう男だ。
人間が苦しむ姿が大好物なのだ
少女の歯が折れ、吐き出される。
頬骨が折れたのだろう、少女の眼球がとびだしたようになっている。
少年がまた、雄叫びをあげた。
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