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捕食者狩り 一刀両断 6
男の次の行動は早かった。
刀となる腕を失った女にそのまま襲いかかった。
男の刀は縦に横に斜めに、銀色の軌道を描いた。
その軌道が輝く度に女の身体は血を吹き出すバラバラの部品になった。
女の身体は立ったまま、見事に解体され、繋いでいた糸が切れた操り人形のようにアスファルトの上に一つづつ、ころがっていった。
「 !!」
女をバラバラにされて、少女が叫んだ。
おそらく女の名前だろう。
部下に渡された紙をめくる。
間違いない。
3日前まで市内でピアノ教師をしていた女だ。
少女の方は高校生。
女にピアノを習っていたらしい。
どちらも普通の生活を送っていた。
狂うのは捕食者だ。
普通は。
人を殺そうと暴れる化け物になる。
だが、この少女は率先して殺すことに参加している。
「殺したかった」少女が「殺さずにはいられない化け物」の女と結びついたのか。
元々恋人だったのか、捕食者になってから恋人になったのか。
それはわからないが、私は一つ考えていることがある。
捕食者と従属者の間にある絆は、単なる恋愛感情やストックホルムシンドロームだけでは語れないものがある。
捕食者の能力と従属者との関係性はあまりもしっくりしすぎている。
男と少年、捕食者としては低い能力である為、頭脳を駆使して戦う男には高い機動力と身体能力を持つ少年が相応しい。
彼らが前に戦った「狂犬」と「青年」は青年は無力であるが故に、狂犬は彼を守るために予想外の戦闘能力を発揮した。
その後であった「金髪」とその「相方」は遠方から操るタイプの能力である「相方」をカモフラージュするために戦闘能力が高い「金髪」の存在は相性がいい。
ただ偶然出会った二人にしては相性が「よすぎる」のだ。
捕食者と従属者との出会いは、必然性があったのではないか?
全て私の仮説にすぎないが。
男は女の胴体の胸の部分を踏みながら大笑いしていた。
「僕ね、女嫌いなんだよね。こういう胸の脂肪とか・・・吐き気がする」
女の刀に変化した右腕を抱えて、呆然としている少女を面白そうに眺める。
男は何かを探す。
ロングスカートがめくれ、下着があらわなった脚のない下半身をみつけた。
そして、その股の付け根を靴のつま先で踏みつけた。
バラバラになっても生きている肉片はピクリと震えた。
少女の目が怒りで燃える。
「だけどね、僕、女が抱けないわけではないんだよ。ここに突っ込んでやってもいい。バカ女、お前が嫌がる顔を見れるなら、それで充分楽しめそうだ。コイツの頭や手足を地面に串刺しにして、元通りにならないようにしてここだけ使おうか。汚らしい脂肪のある胸がないだけまだここだけならがまんできるし、なんなら後ろは男も女も代わらないしな」
男はくすくす笑った。
本気で言っているのがわかった。
この男は本当に下劣なのだ。
恋人の前でバラバラに引き裂いた女を嫌がらせで抱くぐらい平気でする。
「バカ!!いい加減にしろよあんた!!」
少年が怒鳴った。
ヨロヨロと立ち上がる。
やっと首がくっついたらしい。
男は面白くなさそうな顔をした。
「女は浮気にならないと思う。だって僕、女嫌いだし。それにコイツら人間ですらないし」
男は言った。
言い訳しているつもりらしい。
「浮気とか浮気じゃないとかの問題じゃないし、もちろん女でも浮気だ。ダメだ!!」
少年がムキになって怒鳴る。
「・・・てか、あんた、女もイケたんだ」
ちょっと意外そうに少年は言う。
少年は「女の子はダメでそれがつらかった」と打ち明けてくれたことがある。
少年は男にしか性欲を感じてないのだと。
女の子は嫌いじゃないけど、その気になれないのだ、と。
その点では男とは全く違う。
「ある意味では何も隠さないでいい今が楽かな」と笑っていた。
だからもう気にするな、と。
私達が彼を男にさし出したことを。
それこそそういう問題ではないのに。
「僕は抱こうと思えば誰でも抱ける。そんなことはしたくないけど」
男はつまらなそうに言った。
「お前以外はセックスするより、痛めつける方が好きだよ」
男は甘く少年囁いた。
「全く嬉しくない」
少年はつれない。
男はため息をついた。
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