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捕食者狩り 一刀両断 10
少女の長い手足が美しい軌跡を描く刀を操る。
それは私が知っているような武道の動きではなかった。
右でも、左でも、両手でも、少女は自在に持ち替えながら刀を操り、ふつうでは有り得ない体勢から攻撃を放った。
地を這うように屈んだ姿勢から、片足で伸び上がった姿勢から。
どんな姿勢をとろうと、少女の身体はバランスをとりもとす。
昔妹たちに連れていかれたバレーのコンテンポラリーというの思い出した。
長い手足のバレリーナ達は、不自然な角度まで身体を倒し踊っていた。
あの感じだった。
そしてまるで、男もそれに応えるように踊っているようだった。
男は軽やかなステップを踏み、少女とは反対に常に正しい姿勢をとる。
まるで少女をパートナーにするかのように。
二人はとても美しかった。
だが、分が悪いのは男の方だった。
少女は予測し動いている。
言うなれば、決められたダンスを踊っているだけだ。
だが、男はその瞬間瞬間に判断し、決断しながら動いている。
抱える緊張感は全く違う。
長く続けば続く程、疲弊していくのは男であり、少女は常に正しい解答を知っているが、男はいつ間違うのかもわからないのだ。
そして、間違えば死ぬ。
男の柔らかな髪が散る。
紙一重でよけたのだ。
男の顔に汗が浮かぶ。
ギリギリなのだ。
このままでは・・・男の緊張が切れた瞬間に終わる。
そう思った。
一度斬られたなら、そこから続けざまにバラバラにされ、吸い込まれるのはわかっていた。
男は死ぬ。
その時、少女の顔面にむかって突き刺さるような蹴りが延びてきた。
少年だった。
男の援護だろう。
徒手空拳で、少女に立ち向かおうとしているのだ。
尤も、どんな武器を持っていても少女には関係ない。
少女に対抗できる武器を持っているのは男だけなのだから。
少女は少年の蹴りを当然のようによけた。
そこに男の刀が飛ぶが、それさえ少女には織り込み済みだ。
わかっていたかのように動きながら、少年が腹に撃ち込もうとしていた拳もよけて、少年の腕を切り落とした。
赤い血が飛び散り、また少女を赤く染めた。
そこに男の攻撃がきたが、少女は難なくかわす。
少年は腕を失っても構わず、そのまま蹴りを返す。
そのまさかの攻撃さえ、少女は読んでいたのだ。
少年の蹴り脚が斬られた。
片足、片手で立つ少年に少女は追い討ちをかけた。
残りの腕、脚も切り落とされた。
ただ、首だけは切り落とし損ね、肩から胴体を2つに斬ることになった。
少年が僅かによけたのだ。
男は呆然と立ち尽くす。
首は落とされていない。
このままなら再生する。
だが。
くわん
少女の刀が音をたてた。
吸い込まれてしまえば、少年はきえる。
男が突っ込んできた。
速攻だ。
少女は微笑みながら避けるだけだ。
私もライフルを構える。
だがこれだけ二人が絡み合っていては・・・。
だけど少年を殺すわけにはいかない。
くわん
くわん
少女の握る刀は鳴り続ける。
男は攻撃し、少女はよけ続けた。
くわんびしっ
刀ははじけ、闇のジェルになり宙に広がった。
少年に覆い被さり、吸い込み消すために。
「 !!」
私は思わず少年の名前を叫んだ。
彼が死ぬのは、そう、耐えられなかった。
部下さえ殺してきたのに。
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