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捕食者狩り 一刀両断 11

 男が笑った。  我慢しきれない笑いだった。  男は宙に広がる闇に向かって、いつの間にか、刀から銃に変化させていた右腕を向けた。  「こうなるのを待ってたんだよ」  びしゅっ  エアガンのような音がして、男の銃から何かが飛び出した。  それは、宙に広がり今にも少年に覆い被さるばかりになっていた闇を打ち抜いた。  男の銃から何が出てくるのかはわからない。  男も知らない。  ただ、それがあたった場所の半径50センチほど球状の範囲にあるものを消す、それだけがわかっていることだ。  ただ、それが少女の何でも防ぐ盾や刀に通用するかはわからなかった。  それに一度使って失敗したならば、少女に攻撃が見切られる。  有効に撃てる一発を使うタイミング、そして、刀や盾がなくなる一瞬を男は待っていたのだ。  「首だけは斬られるな」  少年に言った指示こそ狙いだったのだ。  少年をバラバラにし、吸い込ませること。  それだけを男は待っていたのだ。  この男はまたしても、少年を餌にしたのだ。  もし少年が首を斬られたなら?  彼は再生せず、死ぬのに。  今回も確かに少年は首を斬られるのを避けた。  でもそれは・・・あまりにもギリギリすぎた。    男に対する怒りのようなものが、柄にもなく沸き上がってきた。  いや、いい。  今はいい。  冷静になるべきだ。    少年はとりあえず生きている。  闇には男の銃は効いた。  闇にはポカリと穴が開き、悲鳴が聞こえた。  女か少女なのかはわからなかった。    次の瞬間、闇は胴体の半分と右腕をうしなった、裸の女になっていた。  男は笑った。  残酷に。  そう、少女は女から切り離された。  女である刀を持っていたこらこその超人的な身体能力、もちろん少女自身の能力もあった。  驚異的なバランスや身体のミリ単位のコントロール能力などは、ラインを読む能力と共に彼女のものだろう。  だが、男や少年に負けないスピードや腕力は、刀からの影響だったはずだ。  従属者は、不死身なだけの人間だからだ。    少女は女に駆け寄り男の前に立ちふさがった。    そう、半身をうしなった捕食者も、力を失った従属者も。  今は男の前で、ただの獲物でしかない。  「バカ女!!」  男は女と自分の前に立ちふさがる少女に向かって微笑んだ。  意外にも、それはちゃんとした微笑みだった。  「僕は女は嫌いだが、結構お前は気に入った。いい度胸だ。人の恋人バラバラにしてくれたけどな」  男は振り返る。  少年は腕はくっついたらしく、這いながら自分の脚をとりにいっていた。  放って置いても、いずれ触手か脚のように出てきて本体まで運んでくれるが、自力でつけた方か早く再生するからだ。  少女は最早為すすべもないのに、それでも挑戦的に男を睨みつけた。  女に男を近づけないために、まだ戦うつもりだ。  何もないのに。  その姿は確かに美しく、男が感心したように頷くのは納得がいった。  「お前だったら・・・痛めつけて殺してからなら、抱ける気がする。・・・女なのにな。だけど残念ながらもう、抱くのは一人だけなんだ。浮気はしないんでね」  残念そうに男は言った。  「はぁっ?」  少年のキレたような声がした。  キレて当然だ。  餌に使われたあげく、他の女お前だったら抱いてもいいとか男が言っているのだから。  「だからしないって、浮気はしないから!!死体でも女でも!!」  男が慌てて言う。    「・・・とにかく、だ。この女はもう刀にもなれないし、右手を失ったから刀も出せない。今じゃ不死身なだけの生き物だ。お前が僕の言うことを聞けばこの女の命だけは助けてやってもいい。研究所送りだがな」  男は言った。  確かに。  生きている捕食者のサンプルは必要だ。  戦闘能力を失った個体ならばなおさら。  研究所には捕食者達が飼われているという話だが、私も男もその実態は知らない。  前回の捕食者達との戦いで、捕食者によって身体を植物化された人間達がいた。  そして、今完全に植物になった植物人間達もそこにいるのは知っている。

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