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捕食者狩り 一刀両断 12
「お前の恋人は殺さないでやろう、バカ女。だからお前は僕に刻まれるんだ。ゆっくりと」
楽しげに男は言った。
「だめ!!」
片腕と胴体の半分を失った女が言った。
失った切断面はもうもとに戻らないことを知っているのか、皮膚で覆われている
生まれた時からこの姿だったかのように。
剥き出しの身体は、柔らかく、白く、抉られたようにパーツか奪われていても、美しかった。
少女が唇を噛む。
「何お前が断れば、お前の首を跳ねた後、このクソ女でゆっくり時間をかけて楽しむだけだ。選ばしてやっているのは特別サービス。本当は二人ともゆっくりいたぶるところをどちらか一人にしてやってるんだ。・・・僕はお前が気に入ったからな」
男は唇を歪めて笑った。
そんな顔をしていても、信じ難いことにこの男は美しい。
話す内容の醜悪さにも関わらず。
「僕はお前を刻みたい」
まるで愛の告白のように男は言った。
少女は振り返り女を見つめた。
その目は愛おしげだった。
「だめ。だめ」
女は繰り返した。
「あたし、幸せだったんだ。・・・まさかアナタみたいな優しい人があたしみたいな人間のところに堕ちてきてくれるなんて思わなかった。一緒にこんなことしてくれるなんて思わなかった。綺麗で優しいアナタをそっと見るしかないと思ってた」
少女は告げる。
最後の言葉を。
少女は覚悟を決めている。
「アナタがあたしのところへ来てくれた、地獄に落ちてきてくれた時、もうこの先どうなってもいいと思った。だから、別にいいんだ」
少女は微笑んだ。
捕食者は人を殺す。
それは本能だ。
捕食者になった人間はその本能に従う。
それまでどんな人間であったとしても。
女は優しい人間だったのだろう。それまでは。
おそらく、殺人衝動を抱えて生きていたのは少女だったのだ。
そういう衝動を押し殺して生きている人間は存在する。
全員が殺人者になるわけではない。
死ぬまでそれを自分の中に閉じ込めて生きていく人間もいる。
おそらく少女もそうだった。
ただ、女が捕食者になった。
それが少女を解放した。
二人は一体となり、人を殺すのを楽しんだのだ。
たまたま、女が捕食者になったから。
いや、やはり、捕食者と従属者の関係にはまだ何かあるのではないのだろうか。
偶然にしては出来過ぎた組み合わせではないだろうか。
刀になる女と、元々殺人衝動を持つ女。
「アナタがずっと好きだった。こんなあたしが触っちゃいけないと思う位好きだった。でも、アナタがあたしを受け入れてくれた。こんなあたしのまま。それがあなたが、そうなったからだとしても、まさかあなたが堕ちてきてくれたからだとしても、あたしは幸せだったよ」
少女は女にキスをした。
まるで、花嫁にするようなキスを。
「だめ!!」
女は叫び、すがりつく手と脚は切り離された。
男によって。
「邪魔されたら迷惑だからね。これ以上はしない。約束する」
男は真面目な顔でいいながら、女の手足を放り投げた。
「さあ、来いよ」
男は恭しく少女に手を差し伸べた。
まるでダンスに誘う紳士のように。
「だめ!!」
四肢を無くした女が叫んだ。
少女は優しい微笑みを女に向けると、男の手を優雅にとった。
苦痛のダンスを踊るために。
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