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懇願 5

 オレは平気だ。  今までだってレイプされたことだってあるし、欲しい情報のために酷く抱かれたことだってある。  酷くされても、病気もらったり殺されなゃ構わない。  まあ、病気は何度かもらったし、寝込まなきゃいけない羽目になったこともある。  潜入に失敗した先で、そういう趣味を刑務所で覚えてきたヤツらがいて。  リンチされて犯された。  あん時はひと月は入院したし、性病まで移されていて泣けた。  だけど、犯されたおかげで殺されずに済んだ。  ヤツらがもう動かないと安心している隙に逃げ出した。    だから慣れている。  慣れているのに。  性欲の解消だって、そういうバーで男を拾って乱暴にされるくらいでいいのに。    恋人なんか作ったこともないのに。  こんなに優しく抱かれたことなんかないのに。  「さっさと突っ込んだり殴ったりしろよ!!」  オレは耐えられなくて叫ぶ。  男の舌は今はへそから脚の付け根の薄い皮膚をなめていた。  優しい舌遣い。  落とされる優しいキス。  付け根から膝までを何度もキスされる。  触れられる指の甘さ、優しさ。  大切なもののように扱われる  こんなセックスは嫌だ。  嫌だ。    か突きまくって、乱暴に扱って、オナホ代わりに使うか、殴るなり、蔑んだりして、支配欲でも満足させればいい。  それでもいい。  それでもオレは満足できる。  オレはレイプされてもイける、ド変態のマゾ野郎だぞ。  初めてしたアイツとのセックス以外はそんなセックスしかオレは知らない。  アイツとのセックスだって、アイツが初めてだったから酷く痛いだけだったし。    男は優しく脚を愛撫するけど、勃起し、零れつづけるそこにはさわってくれない。  欲しがって、ひくついている穴にも触れようともしない。  唇にも乳首にもまだ触ってくれない。  「愛してますよ・・・」  優しい声が青い嘘をつく。  優しく太腿を吸われて、また前から零れる。  「あ・・・あっ・・・」  こんなこと位で。  なのに、やっと優しい愛撫をやめてくれたと思ったら包み込むように抱きしめられた。  男の長い手足に身体を絡められ、小柄な俺を受け止めるには十分な広さはある胸に抱き留められ、背中を撫でられる。  男は服を着たままだったけれど、男のズボンの中の堅いものが腹に当たって、コイツも一応欲情していたのだとホッとした。  なら、欲情しているならなんで突っ込まない?  突っ込んで引き裂いて殴ればいい、満足するようにすればいい。  なぜ、なぜ、そうしない?  ただ抱きしめられ、背中を優しく撫でられ、首筋に甘くキスされる。  なんだよ、これ。  なんだよ、これ。  「愛してます」  「愛してます」  青い言葉だかは嘘だとわかっているのに、耳元で囁かれる言葉は甘い。  身体が震える。  やめてくれ。  やめてくれ。  勘違いする。  身体が心を裏切って勘違いする。  こんなことされたことがないから勘違いしてる。  身体はうれしがって、また前から零し始める。   いたことのない恋人に愛されていると思っている。    あからさまな性感帯への愛撫じゃないから、触覚や聴覚が心を裏切って、間違った情報を身体に送っているんだ。  身体は喜んでいた。  酷いことに馴れきってくれて、どんなに酷くされても達してくれたオレの身体がオレを裏切っている。  優しい言葉と優しい声と優しく触られるだけて、とけてしまっている。    オレは男の目を見ることにした。  そこには残酷な光があるはずだ。  視覚でなんとか、身体を取り戻さないと。  こんな状態で、「本当に」抱かれたならどうなってしまうのかわからない。  オレは怯えた。  苦痛よりも恐ろしかった。  苦痛からでもオレは快楽は拾える。  でも、こんなのは知らない。  オレは男の目を見つめようと、男の顔をオレの喉から引き離した。  甘くそこに口付けていた男は、引き離したオレの指を掴んで、キスしながらオレを見つめた。  信じられないことに・・・。  男は小さく微笑み、その目は優しかったのだ。  整った顔が、柔らかく綻ぶ。  視覚さえオレを裏切っている。  「愛してます」  その言葉が青いことだけがかろうじてオレを救う。  優しく頬を撫でられ、顎を掴まれた。  キスされるのだと怯えた。   こんな状態にされて、こんな身体をとかされて恋人みたいにキスされたらどうなるのかと怯えた。  何人もにレイプされた時より怖かった。  嫌だ。  嫌だ。  身体は期待して震えている。    「お願い・・・やめて」  オレは懇願した。  「可愛い私の恋人」    青い嘘は、それでも優しく響き、重なる唇にオレの身体は喜んだ。    そこから乱れたのはオレだった。  身体にひきずられた。     そのキスで頭がおかしくなった。  夢中で男に抱きつき、自分から強請り、男シャツを剥ぎ取った。  男の身体にすがりつき、唇が当たるところを夢中で吸った。   男がやっとオレの後ろの穴に触れてくれ、指をいれてくれた時、夢中で自分から腰を振った。  男のズボンの中に手を入れ、男のそれを夢中でこすりたてた。  愛しくてたまらなかった。    オレはおかしくなっていた。  身体は勘違いした。  いたこともない恋人に優しく抱かれてると完全に思い込んだ。    心がそれに引きずられた。  男を愛した。  一度も恋人を愛したことなんかないのくせに、愛した。  恋人みたいに。  身体全部で、男に応えていた。  いたこともない恋人だと、男のことを認識していた。  そんなことあるはずもないのに。  挿れられてからは狂った。  嬉しくて嬉しくてたまらなかった。  身体が心が歓喜した。  自分から受け入れ、キスを強請り、腰を降った。  壊れた蛇口みたいになってトロトロとこぼし続けるオレのモノ、痙攣し続ける身体、涎を流しつづけ、声さえ出なくなる。    そして・・・意識をとばすまえに気付いた。  オレは・・・オレは・・・。  この男にレイプされた。  今まで誰にも触らせなかった心をレイプされたのだと。  オレは深く絶望した。  男の考えいることは全くわからない。  知っているこては教えた。   というより、男が命じたらオレは逆らえないのだ。  知っている限りの捕食者と従属者の情報を与えた。  オレを言うことを聞かせるのは簡単なのは知っているくせに。  何故こんな、こんな方法で身体を開かせる?  オレはこの男が怖い。  何を考えているのかが分からなくて怖い。  「   」  途切れそうになる意識。  オレは祈りのようにアイツの名前を呼んだ。  助けて。  ここからオレを逃がして。

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