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探索 1
「・・・確かにあやしすぎる男だな。本当に存在するかもわからないくらいだ」
僕は犬とガキに分かってきたことを説明している。
今回は僕が「情報屋」でもあった頃、いや、まだやめた訳ではないんだが・・・、のつてなども使って調べている。
行方不明の犬の「ヤり捨てた」相手が、調べていた男はあやしすぎる男だった。
ちゃんと調べてやっているのだ。
この僕が。
名前もない。
姿もない。
本当にいるのかどうかもわからない男について。
犬の「ヤり捨て」相手が残したメモや資料やノートも使った。
犬の「ヤり捨て」相手はなかなか良い「情報屋」だったようだ。
こちらは僕とはちがって「表社会」に情報を売っていたようだけど。
警察や犬のとこにか。
金はたいしたことはないが、本業のライターとしては特ダネを警察から貰えたりするし、金が本当の目的ではない種類の情報屋なわけた。
本業に役に立てるためにしていた点では僕と同じだな。
「・・・ヤり捨てた覚えはないんだが」
犬が何か言っているが黙れ。
ガキにはコイツについて一度キチンと説明してやらなきゃいけない。
ガキが犬を「良い人」だと思っているのは前から気に障っていたんだ。
大体コイツは性奴隷として僕にお前を差し出したような奴だぞ。
でも、そんな気に入らないお前のためにちゃんと調べてやったんだから、感謝しろ。
しかも、これはボランティアだからな。
僕の「情報屋」としての顔は裏の世界を歩き回る時の隠れ蓑で、僕の本来の仕事は「始末屋」だった。
組織に頼らず、一人でやっていくのは、中々裏稼業でも大変なのだ。
特に仲介を必要とする「始末屋」は。
その上僕はもといたところのボスを殺して独立してたしね。
僕は仲介役の「情報屋」の僕と、実行役の「始末屋」の僕を別人ということにして活動していた。
その方が色々都合がよくて。
「僕は情報屋はまだしてるからな。色々情報は流している分流れてくる」
始末屋は正義の味方になったので休業中だが、情報屋としてはまだちゃんと仕事をしていた。
今だって、犬達の周辺にいることで使えるネタは流してる。
動いていない情報屋は役に立たないとされるからな。
「ちょっと待て。我々の情報を流しているのか、お前は」
犬が慌てたように言った。
「流しても構わないものだけだ。たとえばこの間のバカ女達の騒ぎ。あんたらはあれをテロということにした。でも、【本当はテロではない。個人的にあばれた奴らがいただけだ】、それだけの情報でも必要なやつには必要なんだ。敵対勢力が大きな仕事をしたわけではないことがわかるだけでも、それが役に立つことも裏の社会ではあるんでね」
あの連中がここで騒ぎを起こしたわけてはない。
それを確かめられるだけでも、その情報は意味を持つのだ。
不確かな情報がいきかう裏社会だからこそ。
確かな情報を与えられる情報屋は重宝されるのだ
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