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嘘つきのメソッド7
目が覚めると、ドロドロに汚されていた身体は綺麗にされ、シーツを変えたベッドの上に寝かされていた。
全裸なのはアイツの趣味だ。
・・・ド変態だからな。
人とヤった後に挿れたがるって趣味は・・・エグい。
その変態はすやすやとオレの隣りで寝ている。
オレの上に抱きしめるように片腕が乗せられていた。
寝てると、年下なんだなっておもう。
20はいくつもの過ぎてはいないだろう。
整った聖人のような顔は今は無邪気さが加えられ、えげつないセックスするような男にも、大量殺人犯にも、詐欺師にも見えない。
人を外見で判断してはいけない。
絶対に。
でもオレはコイツの胸に甘えるように身体を寄せた。
コイツも裸だ。
人肌が好きだ。
暖かい。
「うん?」
アイツは少し目を開けて、柔らかに笑うと、オレを抱きしめてまた寝息をたてる。
不死身の捕食者でも寝る。
それを言うなら、従属者になったオレも不死身なんだが寝るけども。
安心しきって寝ているコイツが憎々しい。
でも、オレは逃げられない。
コイツがそうしているのだ。
逃げたいと言う意志はある。
だが、実際に行動することは出来ない。
やってみる気さえしないのだ。
コイツがねている隙に逃げようとしても。
アイツに電話しようとしても。
思いついても、そう、身体の力が抜けて動けなくなるのだ。
そう、具体的な行動に関しては。
だが、オレは気付いた。
具体的にオレがアイツがから逃げる方法でないのならば、行動できることを。
コイツは全くオレのすることを全く制限しない。
平然とオレを置いて出て行く。
そして、オレはアイツが置いていくノートパソコンがロックされていないこともわかった。
悩む所だ。
罠なのか、それともオレの意志を縛っていることに安心しているのか。
それとも、オレが何をしようと何とかできる自信があるのか。
でもオレはやってみることにした。
嘘つきには全部白状させられている。
捕食者とは何か。
従属者とは何か。
オレの知り得る範囲のことだけだが。
国が飼ってる捕食者と従属者がいることも。
さすがにソイツの能力までは知らないが、むしろソイツの過去を洗ったり、従属者の少年の交友関係を洗ったりしたのはオレなので、結構知っていることはある。
そして、アイツのことも。
アイツの大切なあの子のことも。
アイツの大事なモノについて話してしまったことを知らせないといけない。
嘘つきはオレに執着している。
それは間違いない
あの子だと思わせて、アイツに抱かれたことを話したのがあの奇妙な行為、俺をあの男に抱かせてか
ら抱く、それにつながっているのは明白だからだ。
別にあの男に抱かせるのはオレである必要はないのだ。
嘘つきは人間の精神をある程度操作できるのだから。
オレに執着していることはアイツへの攻撃にもなりかねない。
嘘つきを狩る側のアイツに直接何かしなくても、民間人のあの子に何かするかもしれない。
アイツを攻撃するために。
それにあの男だ。
オレを抱かせているあの男。
暴力と死のプロフェッショナル。
なぜあんな男を必要としている?
何を考えてる?
知らせないと。
そして、直接的な助けを求めるメッセージは贈ることができなくても、間接的なメッセージなら送れるかもしれない。
アイツはオレを探してる。
アイツはオレを助けてくれる。
恋じゃなくても、愛じゃなくても、ちゃんとアイツはオレを思ってくれている。
帰る。
アイツとあの子のところへ。
絶対に。
嘘つきはウトウトとしながらオレをだきしめた。
髪を優しく撫でられた。
それはとても甘やかで、オレは嘘つきの胸に顔をうずめた。
こんな、恋人同士のような朝なんて・・・オレはずっと知らなかったから。
逃げるまでは楽しんでやる。
セックスから甘やかされることまでとことんコイツでたのそしんでやる。
そう思い切れば、活力が沸いてきた。
ナメるのはオレのいい所だけにしとくんだな、このクソガキ。
それならいくらでもよがってやるし、むしろ舐めろ。
コイツの舌使いはたまらない。
オレは嘘つきの背中に腕を回しながら思った。
こんな男でも、ちゃんと心臓の音がするのを、不思議に思いながら、心地良い体温に包まれ、もうしばらく眠ることにする。
嘘つきがどこかへ行って一人になったなら・・・やってみよう。
お前から絶対逃げるし、お前が死ぬのを見届けてやる。
オレは決意した。
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