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嘘つきのメソッド9
「思ったままをそのまま書け。向こうがお前を誘導する」
男は言った。
少年はしばらく考えていたが、メッセージを書き始めた。
「俺にはとても大事な人です。何を怖がっているのか知りたい、俺を怖がらないでって伝えたいてす。伝えたら何か変わりますか?と言うよりもう伝えてしまったんですけど。」
少年の書き込みに男はさらに真っ赤になる。
これは愛の告白だ。
だけど、少年は真剣な顔をしてメッセージを送っていた。
私は殺されたくないので見ないふりをした。
「お前はそんなに・・・僕を抱きたいのか」
顔を片手で覆って隠しながら男が呻いた。
「・・・セックスだけの問題じゃない」
少年は真面目な顔で言った。
「あんたは俺を怖がっている、だろ?」
真っ直ぐな目で男を見る。
だから私の前でそういう話は止めて欲しいのだが。
ありがたいことに詐欺師は迅速にメッセージを送ってくれたので話は途中で終わった。
「あなたには、相手がを安心させられる人間になるための努力が必要てす。あなたが愛する人の全てを受け入れられていないからこそ、あなたのしている無理が相手に伝わっているからこそ、相手はあなたに怯えているのです。受け入れられないこともあるでしょう。でも、無理をしているからこそ、あなたとその人はその無理の中で苦しむのです。あなたが相手より大きくなる以外、あなたの苦しみは終わりません。相手を変えることは無理なのですから。あなたが変わるお手伝いが私にはできるかもしれません」
詐欺師の言葉に少年は何度も頷いていた。
納得しているらしい。
「俺のせいなの?そうなの?」
男に尋ねる。
「お前は詐欺師の言葉を真に受けて・・・」
男は呆れる。
またメッセージが送られてきた。
「セミナーのお知らせ」
日付と場所と・・・20万円の請求だった。
指示は具体的だった。
メモをとり口座番号などを記録した後、全てのやりとりを消去し、金を振り込むこと、などの手順がかかれていた。
少年はぼんやりとした顔になった。
男と私か見ている目の前で、テーブルの上のメモ用紙をとり、口座とセミナーの日時場所を書いた。
「20万俺にくれる?俺とあんたのために必要なんだ!!」
少年は男に真剣に言った。
でもどこかぼんやりとしている。
男は頭を抱えた。
「お前・・・こんなにも・・・こんなにも簡単に操られるとは・・・こんなの洗脳ですらない・・・泣けてきたよ僕は」
男の気持ちはわかった。
少年、あまりにも・・・容易い。
多分、暗示もいらないレベルだ。
ため息をつきながら男は用意していた口座からネットで送金してやった。
少年はそれを確認すると、ふらふらと立ち上がると手にしていたメモを台所のコンロで燃やした。
証拠隠滅だ。
次にパソコンで自分が詐欺師に送ったメッセージを消していく。
「×月×日 ××コミュニティーホール」
住所まで、少年は唱えてみせた。
隣の県だ。
聞いたことはある。
だが、これは・・・。
「そこそこデカいホールじゃないのか?」
男は言った。
私は頷いた。
クラシックコンサートなどに使われるホームだ。
「な500人以上は収容できる。そこまで集めないとしても・・・」
私は口ごもった。
「少なくとも100人単位でのお祭りを考えているつもりか」
男が続ける。
男は薄く笑った。
「見てみろ」
詐欺師をフォローしている人数は最初の千人程度から、その三倍近くになっていた。
「コイツ、デカい虐殺祭りをするつもりだね。・・・面白い」
男は楽しそうに笑った。
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