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クロスゲーム6

 待つ。  いつになるかわからないけれど、情報屋はメッセージを送ってくるはずだった。  それは、予想外に早かった。  わすか数分後だった。  公開された書き込みではなく、他人には見られないメッセージ機能を使って送られてきた。  そのために、フォローしていない人間からのメッセージを受け取れる設定に犬のアカウントを変更しておいた。  「オレだ、  だ。捕食者に捕まっている。残念ながら従属者になった。意志を縛られているので、自分では逃げれない」  そう書いてある。  僕は犬に確認する。  「コイツとお前だけが知っているような話はあるか?本人かかどうか確認したい」   犬は少し考えた。  「初めて会った時、オレはどんな服を着ていたかを聞いてくれ」  僕はその質問を送る。  「ダッサイ、詰め襟だよ、しかも上のカラーまできっちり止めてた。中学生なのにすでに詰め襟のおっさんだった」  質問はすぐ帰ってきた。  犬に確認する。  嫌な顔をする。  「本人だ」    犬は言った。  オレは頷いた。  「OK、こちらは国に飼われている捕食者だ。何かそちらの動きで言えることはあるか。逃げたいか?まだ?」  オレはメッセージをおくる。  「ああ、あんたがか。あんたの過去だけは洗えなかったよ。具体的な動きについては意志を縛られていて、書くことはできない。逃げたいか、だと?逃げたいに決まっている。セックスは楽しんでるがね、コイツがオレで楽しむのが飽きるのがいつかも分からないし、それにコイツについてたらあんたオレまで殺すだろうが。あんたの仕事ぶりは知っている、敵にはなりたくないね」  情報屋のメッセージが面白い。  犬の友人にしてはコイツいい。  気に入った。  それによくわかっている。  そちらについたら駆除するだけだ。  犬の友人でも関係ない。    「散々、可愛がられて楽しませてもらってるのに情のない男だな、まあ、いい。書けることだけ書け」  僕は楽しくなりながらメッセージをおくった。      「今すぐ  を保護しろ。その時には出来るだけの装備と人数で。理由は書けない。そして用心しろ。そして祭はたんなる虐殺大会ではない。嘘つきは多分カルトに関係してきた。カルトを調べろ。脳に外科手術をしていたようなカルトだ。これが精一杯だ。これ以上は書けない。もうこの方法では送れない。このアカウントは破棄する。そちらのアドレスをくれ。記憶する」  情報屋からのメッセージ。  「  」とは犬の元嫁か。  できるだけの人数と装備、か。  やはり、なんらかの武力を詐欺師が手に入れたか。   戦闘能力のない捕食者には自分の身体を守る必要がある。  具体的なことを書けないのは意志を縛られているからか。  祭とは今度行われる、セミナーのことだろう。  殺し合わせる以外のことも計画しているのか?    「なんとか生き延びろ。股を広げて腰振って媚びを売って。なんなら咥えてしゃぶれ。出来るだろ、ビッチ。ソイツは絶対に殺してやるから、お前がその時まで生き残ってたら助かるだろう」  僕は最後にオレのメールアドレスを付け加えて、送った。  すぐに僕のスマホにメールがきた。  速い。  「その程度なら別にレギュラーメニューだ。何でもするさ。複数プレイまでこなしてるよ。デカい男に突っ込まれながら、もう一人に視姦されるってのは悪くないぞ。助かったらあんたともしてみたいね。捕食者てのはいい」  ビッチらしい文面だが、普通の言葉では、言えない情報を盛り込んできた。  具体的なことを伝えようとしてもできないが、違うことを伝える中に混ぜることは可能なのか。  やはり、詐欺師以外の存在がいると言っている。    デカい男。  ソイツに気をつけろ、と。  捕食者以外にも股を開かされているらしい。  二本挿れられてガバガバにされてんのかな。  下卑た想像をする。  写真で見た、気の強そうな可愛い顔した男が、泣きながら二人の男にヤラレてるのは、なかなかそそるものはあった。    しかし、捕食者が従属者を他人に分け与えている?  捕食者は従属者に執着するはずなのに。        僕は複数プレイはあまり興味がない。  他人とおもちゃを分け合う趣味はない。  でも、したことがないわけではない。  だが、ガキを他の誰かに触らせると思っただけでも、頭の血管がぶち切れそうになる。  「僕はビッチは趣味じゃない。死なないから永遠にいたぶれるってのは好きだけどね。二本も咥えてガバガバになってる穴も嫌だ。それ以上広げないようにしといた方がいいぞ。とにかく生き残れ」  僕はソイツが送ってきたアドレスに返信した。    「オレのケツの具合は心配してくれなくていい。あんたが挿れるつもりがないならね、なんとかして生き残るさ。また連絡する。合い言葉は【ビッチ】だ」  返信がきた。  面白い。  コイツ面白い。  一度は殺されかけたりはしているはずだ。  詐欺師は殺人鬼だから。    恐怖と、そして欲しがられて抱かれるうちに、その落差に落ちる。  ただでさえストックホルム症候群ってやつもある。  だけどコイツはまた落ちてない。  逃げる気か。  面白い。  コイツを逃がしたい。  コイツが最後まで逃げ切るのがみたい。  僕はコイツを逃がすのに乗り気になった。  正直、コイツはどうでも良かったのだ。  犬への借りをかえす必要こそあれ。  コイツを逃がそう。  捕食者と従属者の関係が、絶対じゃないのを見たい。  従属者が捕食者といるのは、従属者になってしまった特性ではないところが見たい。    だって、従属者になった=捕食者を愛するというわけではないのがわかれば。  ・・・ガキは、本当に僕のことを、僕が捕食者でガキが従属者だからじゃなくっても、本当に僕のことを、好きなのかもしれないじゃないか。  セックスや恐怖や、僕の綺麗な顔や身体で、ガキを落とした自覚はある。  ガキか僕を好きなのは従属者だからかもしれないと思ってしまったこともある。  そうだとしても手放すつもりなどないけれど。     グチャグチャとどうでもいいことを考えているのも分かっている。  どうでもいいことだ。  「僕が捕食者だから僕のことが好きなだけなんだろ」  みたいな馬鹿みたいなことだ。    僕は捕食者だしアイツは従属者なんだから。    でも、従属者が逃げられるのなら、ガキが自分の意志でオレのところにいるのが分かれば。  オレは安心するのか、それともいつかガキの気持ちが変わって逃げられることに怯えるのか?  分からない。  でも、コイツは逃がしてやろうと思った。  「犬、お前の元嫁を確保しとけ」  僕は言った。  「ガキを貸してやる」  

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