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衝突 2

 いつものように男が嘘つきと一緒に、部屋を出て行く。  そして、嘘つきだけが戻ってくる。  ドアが開く音だけで、オレの身体が疼いた。  色々考えていたことを中断してしまう。  ここからさらに汚されることを思って。   男の形に開かれた、男の精液で満ちた穴を、嘘つきのアレがかき回す。  精液をかきだされるように、形を嘘つきの形に直すまで、突かれたり、回されたり、擦られりして・・・嘘つきの精液に入れ替える。  そして、見知らぬ恋人のように感じるようにされた身体を、知らぬ名前で喚ばれ続けて溶けた脳を、嘘つきは優しく愛して、オレにオレの名前を返してくれるだろう。  自分のものだと見せつけるように、口の中にもアレを挿れて愛撫して、出して、飲ませて。   顔や、身体にもかけて。  オレを汚して・・・オレをオレにして、オレを愛してくれる。  名前も知らない男達に抱かれてる時とは違う。  名前なんかどうでもいい、誰でもいいヤツと屋っている時ては違う。  ・・・誰かの代わりとは違う。  オレを、オレ自身を抱いてくれるだろう。  オレはドアの音だけて自分のモノが勃ちあがるのを情けなく思った。  でも、ここから始まることを待ち焦がれていた。  穴がひくつき、精液を零す。  ベッドから起き上がり、嘘つきを見つめた。  綺麗な、聖人みたいな顔した男。  清潔な、セックスなんかするようにも見えない男が、汚されたオレをさらに汚すのだと思えば、オレは興奮していた。  オレは嘘つきに手を伸ばす。   男につけられた痕は全身に残っている。  歯形も、吸われた痕も。  すぐに消えるけど、嘘つきがその前に自分のモノで覆い隠してくれるはず。     ・・・抱いて。    オレを抱いて。  オレは今はそれしか考えられなかった。  伸ばした手の先に嘘つきがいた。  嘘つきは・・・何故か酷く苦しそうな顔をしていた。    でも嘘つきはオレの伸ばした手をつかみ、オレを強く抱きしめた。  自分のスーツが汚れるのも厭わずに。    ズクン  オレの穴が疼いた。  精液が零れ、勃ちあかったモノが震えた。   「・・・出かけてきます」  嘘つきはそう言って、あっさりとオレから身体を離した。  何だと?  「遅くなります」  単なる事実。  嘘はない。  でも、理由も、意味もない。  オレは信じられない思いで嘘つきの手を掴んで離さない。  人の身体をこんなにしていて・・・ほったらかしにするだと?  ふざけるな!!  「挿れろよ!!」  オレは怒鳴った。  自分から股を広げ、震えて勃起しているそれを見せつけた。  欲しがって疼いている穴も。  掴んだ手を、柔らかく広がり、精液をこぼし続ける穴に押し当てた。    嘘つきの手が震えた。  穴をなぞる様に、少し動いた。  指がそこにいつもみたい動くことをオレは期待した。  嘘つきの目は間違いなく欲情してる。  冷たいあの観察する目じゃない。  オレを食い尽くすあの目だ。  「・・・して?」  オレは泣きながらせがむ。  この状態は辛い。    こんなのはイヤだ。  嘘つきがまるで空気がないみたいに肩で息をしている。  穴に押さえつけた指が、少しそこに沈んだ。  「ん・・・」  オレはその指を迎え入れるように動く。  指をいれようと、その手を押さえつける。   その刺激で、ゴポリと、精液がまた零れた。  掻き出して欲しかった。  いつもみたいに。  嘘つきの肩が、指が、震え、その目に凶暴さが満ちる。    これで、出来ると思った。  いつもみたいに、オレをバラバラにして・・・。  そして、誰かの恋人ではなく、オレをオレに戻して。  オレは嘘つきの指がそこに入るのを待った。    「・・・して?」  オレは目を閉じ囁いた。  「愛してる」と嘘をつき、抱いてくれるのを待つために。  嘘つきが呻いた。     ドン  突き飛ばされた。  オレは呆然とした。  こんなことされたことはなかった。  逃がさないように押さえ込まれても。  オレは目を開けた。  そして、オレが見たのは・・・。  オレから逃げるように部屋のドアをあけて走っていく、嘘つきの姿だった。  ・・・マジか。  おい。  

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