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衝突 5
スーツは後部座席に女の子をそっとおろした。
女の子は眠ったままだ。
俺のこれまでしてきた拉致の経験からすると、女の子が薬の効果が切れて気がつくにはまだ時間が必要だ。
俺は女の子に寄り添うように後部座席にのる。
スーツは俺に感謝するように頭を下げ、慌てて運転席に行く。
「なんでそんなに急ぐんだ?」
俺は聞く。
「連中が仕切り直しに来る可能性がある。一刻も早くここから逃げないと」
スーツはシートベルトもそこそこに、車を急発進させた。
「・・・そうなの?来るの?」
俺は急発進に揺れる女の子の身体を抱きしめるようにして押さえながら言った。
俺の腕の中の女の子は小さくて、華奢で。
思わず叫ぶ。
「この子、30才になんか見えないよ!!てか、俺より年上ってのも!!本当にスーツの嫁さん?」
俺はやはり信じられない。
「元、だ。なんなら結婚式のDVDを見せてやってもいいぞ。6年前だが」
スーツは言った。
スーツが今より若かったとしても、それは犯罪的なDVDだろう。
幼な妻だと言ってもこれでは、こんなに幼い感じの女の子では、あんまりにも犯罪だよスーツ!!
凹凸のあまりない身体は、そちらの趣味の人達にはたまらないんだろうけど、ロリコンではないどころが、年上の大人で無理目の男が好きな俺には、彼女がセックスすると思えば痛々しさしか感じない。
「色々言いたいことは分かるが、ロリコンではない。幼なじみで子供の頃から好きだったんだ。私は年をとったが・・・彼女が何故か成長を途中で止めてしまっただけだ。こんなこと言いたくないが、彼女以外に付き合った女性は全員ちゃんと大人だし、彼女だって、一応成人女性だぞ」
スーツはもごもご言っている。
「ああ、合法ロリってやつ?」
俺は言ってみる。
「・・・だから違うって!!オレは彼女が彼女だから・・・外見の問題じゃないんだ」
スーツが錯乱している「オレ」って言っている。
「スーツ、俺はいいけど、あの人にはそんな理屈通らないよ?」
俺はスーツに忠告しておく。
「うっ・・・」
スーツは苦しそうな声を出した。
あの人は彼女を見たら喜ぶだろう。
そして、スーツを「ロリコン」呼ばわりするだろう。
多分ずっと言い続けるだろう。
あの人はペドとロリコンは大嫌いなのだ。
自分だって16の俺をセックス用の穴にしたくせに。
「違うんだ・・・」
スーツが力なく呟きながら、それでも車を猛スピードで走らせる。
そんなに急がなくても・・・。
と思った。
本当に仕切り直してくるの?
と思った。
「来たな」
スーツがバックミラーを見ながら言った。
へえ?
と思って後ろをふりむくのと、車にすごい衝撃がはしるのは同時だった。
女の子を抱きしめる。
ぶつかってくる車が見えた。
フロントガラスまで、色の入った、黒塗りの車の運転手がこちらをつめたい目で見ながら、ぶつかってくるのが見えた。
コイツ・・・イカれてる!!
俺と目があった瞬間、ソイツは笑った。
握っているのはハンドルだけじゃない・・・、右手に握られた拳銃の存在に気付いた時は遅かった。
銃声。
しかも連続で。
車のリアウインドが吹き飛ぶ。
俺の頭の中を銃弾が何発も突き抜けた。
ブラックアウト
俺は一瞬機能を停止した。
だけど、女の子をしっかりと抱きしめたのだけは覚えている。
次に気がついたのは、スーツの声だった。
俺の名前を連呼していた。
「スーツ!!どうなってる」
俺は怒鳴る。
俺は後部座席で女の子を抱きしめたまま、横になっていた。
頭の上を銃弾が通っていくのは、銃声と、運転席に開いていく穴でわかる。
「再生したか!!こっちは撃たれないように身体を低くして運転するのが精一杯だ。援護しろ!!」
スーツが叫ぶ。
運転席と助手席の間から銃が後部座席に投げこまれた。
援護って・・・。
こんなガンガン弾とんでくるのに?
「早くしろ!!」
スーツが叫ぶ。
コイツもあの人ばりに無茶ぶりしてくるなぁ。
俺はため息をついた。
でも、するしかない。
俺は銃を握った。
銃弾が途切れる瞬間を狙って銃を構え、起き上がる。
運転しながら鮮やかに銃弾を装填していた男が驚いた顔をした。
だよな。
確実に俺は殺したはずだよな。
あんた眉間のど真ん中ぶち抜いてくれたもんな。
でも、俺は銃弾では死なないんだよ。
俺は男の顔面に向かって引き金をひいた。
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