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ブレイカー 2

 「早く帰らないと」  俺は言った。  あの人は俺を助け出す手段は考えてくれているだろう。  俺を助けに来る。       でも、先に逃げられるのならそれにこしたことはない。  こんなに長くあの人と離れていたことはない。  前に潜入した時にも夜にはあの人が訪ねてきた。  あの人とシてない夜なんてなかったのに。   毎晩、あの人の髪を撫でながら眠っていたのに。  俺は情報屋が持ってきた服を着る。    家の中には俺と情報屋のふたりだけだ。  詐欺師はいない。  短パンもTシャツも小さすぎるが仕方ない。   詐欺師も情報屋も、オレより細いか小さいのだから。  ドアも窓も鍵さえかかっていない。  情報屋は自分からは逃げられないからこれで良かったのだけど、俺を置いて放置とは、と思ったけれども。  窓から確認したところ、この家の周りは囲まれている。   まあ、そうだろう。  恐らく俺を攫ったあの男が指揮をしているはずだ。  パッと見ただけでも4人。  おもいきり銃を構えている。  まあ、ここなら見つかることもないからだろう。   よくもまぁ、こんな辺鄙なところに。  民家はほかには見当たらない山奥。  でも、どこかの建築家が建てたような少し変わったアートのような家。  住人をバラバラにして衣食住ケースに詰めたところまでは情報屋が確認している。  というか、詐欺師があまりにも解体が下手だったので、この人がバラバラにしたんだって言ってた。  情報屋は写真で見るよりも、可愛い感じの男で、何より、面白い人だったし。  でも、なんかエロいのがヤバい。  小柄な身体がしなやかで、フェロモンだだ漏れで。  俺の童貞はこの人に捧げてしまったのだ。  俺にはこの人を抱いた記憶はないのだけど、あの人を抱いてる夢を見て、その生々しさに夢中になってたら、夢ではなくてこの人を俺は本当に抱いてしまっていたらしい。   目が覚めて、腕の中にこの人が俺の歯形やら、なんやらを体中につけて眠っていたのを見た時のショックは忘れられない。  俺は無意識にその人の尻に俺のをこすりつけていて・・・。  俺は動揺して泣き叫んだ。  うん。     被害者は間違いなくこの人なのにね。    そのことについては今はとりあえず、思考を停止している。  考えたら泣いてしまうからだ。   てか泣いた。  でも、泣いてる場合ではない。  「お前がオレん中に出しまくるから、掻き出すのも大変だったよ」  シャワーを浴びた情報屋が肩にタオルをかけたまま、服も着ないでやってくる。  白いしなやかな身体。  むきだしのソコを隠すことなく揺らしながら笑って歩いてくる。  俺は慌てて目を逸らす。  「何か!何か!着て下さい!!」  俺は叫ぶ。    俺はあの乳首を吸ったんだよな、とか、アレを口に入れてしゃぶったんだよな、とか、あのうなじに噛みついたんだよな、とか、熱くて気持ちいいアソコの感覚とか・・・、身体が熱くなってしまっている。  「何を今更、裸位・・・、あっ、ごめん。元気になっちゃった?そうだよな、若いもんな、ごめんごめん」  あの人は俺の股間を見て謝った。  見ないで欲しい。  俺は真っ赤になってうずくまる。  視線だけでも、今の俺にはキてしまう。  セックスなんてもう数え切れないほどしてる。  でも、生まれて初めて入った人の中の気持ち良さは・・・想像以上だった。  何、アレ。  口でされるのとは全く違った・・・。  「なかったことにするって言ったのはあんたのくせに・・・」  俺はまた涙ぐんでしまった。  あの人を裏切ったこと。  でも、すごく気持ちよくって、それが忘れられない自分への嫌悪感。  意志を無視してこの人の身体を弄んだ罪悪感。  なのに、俺はインポにもならず、情けなくもまた勃ててしまう。  「・・・処理してあげよっか、とか言ったらダメなんだよな、コレ。口とかでやるのはノーカウント、じゃないよねぇ」  またこの人がそんなことを言うから俺は泣く。  したくなるからだ。  その口の中に突っ込んで喉を犯したいからだ。  そんな自分が嫌で泣く。  「ごめん、お兄さんが悪かった。早くトイレで処理しといで。勃起したままじゃ逃げられないし。ちゃんと服着ておくから、泣かないでくれ。・・・慰めるために触ったりもしないから、何もしないから、本当に何もしないから!!」  情報屋が困ったように繰り返した。  「・・・ごめんなさい・・・」  俺はしゃくりあげる。     「・・・まいったね。君本当可愛いな。抱ける気すらしてきたよ。オレバリネコなのに」  ポロッと情報屋が言って俺はまた泣けてきた。  これで抱かれでもしたら完全に・・・・。    また涙と嗚咽が。  「抱かないから、抱かないから!!」  情報屋は叫んでいた。    「とにかく、嘘つきが帰って来る前に逃げるぞ」  情報屋は言った。  俺は情報屋の言いなりになるからだ。  俺は詐欺師に洗脳されている。  詐欺師がいたら詐欺師の思うがままに動かされてしまう。  詐欺師は姿を消したままだ。  正直俺は詐欺師に会ったことも覚えてない。  気がついたら、裸で横たわるあの人が目の前にいて、後ろの穴を弄りながら喘いでいたから夢だと思った。  夢だと思ったから遠慮なく貪った。  そこからは忘れたくても忘れられない。  あ、また泣きそう。  「とーにかーく!!逃げるから!!!」   情報屋に殴られる。  そうだ、しっかりしなきゃ。  しかしこの人タフだな。  拉致されてから数ヶ月にはなるはずだ。  全く折れて無い。  スゴイ。  虐殺、拷問、尋問、強姦、監禁。  フルコースで食らっているはずなのに。  可愛い感じのお兄さんにしか見えないのに。  スーツとそんなに変わらない年にも見えないし。   もっと若く見える。  感心してしまう。   「なんだよ、そんなに見つめんな。惚れんなよ。お前の男怖いんだから」  情報屋は笑った。  「あ、それはない。惚れないよ」  俺は断言する。  俺はあの人だけで精一杯です。  「・・・即答かよ、ムカつくな。とにかく、警備が緩い理由はわかってるんだ。オレが逃げれないからだ。嘘つきはお前が逃げてもいいと思っているかもしれない。それか、お前がオレをおいで逃げたりはしないと思っているか、だ。オレはこの部屋から、嘘つきの許可がなければ逃げれない。多分、お前が連れ出せば、暴れてでもこの部屋に帰ろうとするだろう。オレは意志を縛られているからだ。そこで、だ」  情報屋は言葉を止めた。  「お前はあの男、お前を捕まえたあの男から【逃げる】だけなら可能か?戦わなくていい。ただ、山の中を走って逃げるだけなら」  情報屋の言葉に俺は頷く。   俺は速い。  戦ったなら、また嵌められるかもしれない。でも、逃げるだけなら・・・。  走りきる。  「山を降りて街に入ればさらに逃げやすくなるし、助けを求められるチャンスも増える」    情報屋は計画を語った。  俺は青ざめた。  「本気?」  俺は聞く。  「なんでもするさ」  情報屋は言った。  「惚れないけど、尊敬する。あんた、スゴイ男だ」  俺は言った。  「ああ、知ってるよ」  情報屋はうそぶいた。    惚れないけど、この人はスゴイ。  惚れないけど、好きになってしまいそう。    これは浮気じゃないからね。  俺はあの人に心の中で言い訳をした。  「でも、可愛いよな君。オレ、逃げたらビッチやめて真面目なお付き合いしようと思ってんだけど、年下と付き合って抱いてもいいかなって思ったよね。抱かれる以外の選択肢を考えてなかったからな、新しい扉開けそうだよ、君のおかげで」  脱出の準備の道具を家の中で一緒に探している。  情報屋はそんな軽口をたたいてくる。  「俺達の間には何もなかったんですよね?」  俺は言う。  あんまりにもあっけらかんとされているので、この人の意志を無視して抱いたことにたいする罪悪感の置き場に困る。  いや、本人がどうとか言う問題ではないので俺の罪が消えるわけではないけど、ものすごい独特の貞操観念なのはわかってきた。  「ないない。オレと君の間にはなにもない。怖いから。ないから。でも、君可愛いから、挿れる方やってみたくなった。なんか新しい扉開いたよね、オレ」  ケロリとこの人は言う。  「ええ?じゃあ、スーツとすればいいんじゃ、いや、俺  さんのことスーツって呼んでるんですけど、挿れる方なら問題ないんじゃないですか?」  俺は軽口を叩いてしまい、しまった、と思った。  この人が十何年も想い続けている、恋心をそんなふうな軽口に使ってしまったなんて!!  この人はこんな感じだけど、一途な人なのは聞いて位たのに!!  それに大体スーツを抱くって・・・この可愛い人が、俺よりデカい、ゴツい、あのスーツを。  俺はふざけすぎてしまった。  人として間違ったジョークを!!   「・・・その手があったか!!」  意外にも情報屋はふむ、と頷いた。      「思いつかなかった。でも、別にそれならアイツが勃たなくても問題ないな。・・・よし、逃げたらアイツを抱いてやる」  目的のものをクローゼットの奥に見つけて、とりだしながら情報屋はニコニコ言った。  ええ?  「でも・・・スーツの同意とか、とれますかね?」  俺は恐る恐る聞く。  「お兄さんの経験値をなめるなよ。最終的に同意をとる方法なんていくらでもあるんだよ。どうせ、彼女とより戻すつもりもないんだから、アイツはオレに可愛がられてりゃいいんだ」  そう言いながら、情報屋は俺についてこいと、手招きする。  これから俺達は脱出の準備をしなければならない。  気の重い準備だ。  「アイツの童貞はオレが貰ったし、オレの処女はアイツにくれてやったんだから、アイツの処女も貰うし、アイツにオレの童貞はくれてやろう」  情報屋は上機嫌だった。  マジだよね、これ。  この人本気だ。  この人は本気でどんなことでもする人だ。  俺は思った。  スーツ、ゴメン。  俺、余計なこと言った。            

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