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奪還 1
起き上がった時の最悪感は最高潮だった。
身体を綺麗にされ、シーツまで帰られ、パジャマまで着せられているのが余計に。
僕が意識を失っている間に、風呂に入れ、穴から精液をかきだしたんだろうなってわかるのが腹立たしい。
多分それを、嬉しくてたまらないといった顔で、いそいそとやっているガキは容易に思い浮かべられ、ますます腹が立つ。
身体はとっくに回復してる。
むしろ脳を快楽に焼かれたダメージは、まだダメだ。
僕達は不死身だけど寝る。
寝ないと脳のリセットがうまくいかないからだ。
そしてまだ、脳のリセットは上手くいってない。
昨夜の生々しさはまだ、身体の感触として残ってる。
「クソ!!」
僕は唸った。
枕をなぐる。
思わず喘ぎそうになったからだ。
ガキのが後ろを擦るあの感覚をなまなましく思い出して。
思わず腰かゆれしまうあの感覚。
ムカつく。
ムカつく。
忘れてしまいたいのに。
ガキが穴を舐める感触さえ身体に残ってしまっている。
身体はすっかり回復して、昨夜の跡などどこにも残していないのに、記憶がガキの指や舌や、硬く熱いガキのモノの感触を身体に残す。
全身、舐められ吸われた。
ここにどういうふうに触れたか、どういう風に吸われたか、どういう風に突っ込まれ擦られたか。
身体が覚えている。
僕は喘いで、泣いて、脚を自ら開いて・・・受け入れた。
「!!」
僕は腹立ちをベットサイドの時計にぶつけた。
壁に投げつけられた時計はバラバラになる。
誰かをバラバラにしたい気分だった。
殺してきざんだやりたい。
思い出したくない。
僕は最後は自分から・・・ねだった、なんて。
時計の壊れる音に、駆け込んできたのはやはりガキで、そののほほんとした顔が愛しくて、ムカついた。
「どうしたんだ?」
心配そうに声をかけられる。
どうしたじゃない・・・。
お前のせいだ。
でも、今真っ直ぐに僕を見る目に安心する。
昨日ガキが僕を見なかった時、「殺して」と死んででも僕から逃げようとした時、怖かった。
ガキがいなくなるのが、怖かった・・・。
ムスっとした顔でガキを睨む。
でもガキは笑ってそれを受け止める。
ああ、いつものガキだ。
,
そこはホッとする。
そして恐怖する。
昨日自分がガキを失うギリギリのところにいたことに。
ガキを殺そうと思った。
犯しながら首を捻り切って殺してやろうと。
赦せなかった。
どうせガキのせいなんかじゃないことは分かってた。
詐欺師の悪意は予想できたはずなのに。
人の心を弄ぶ。
人を本気で信じさせて裏切る。
始末屋やってた僕もゲスだが、詐欺師ってのはゲスの中でも最低の種類のゲスだ。
しかも、殺人癖まであるなら、クズの中のクズ。
めったなことでは最低なことでは人には負けない僕でも負け認めるほどの卑劣なヤツだ。
分かっていたはずなのに。
詐欺師がガキに抱かせた相手は、・・・何も言いたがらないところから、情報屋なのはすぐにわかった。
僕だと思わせて抱かせたのも分かってる。
さすがにクズ。
ガキの一番の願いを使って、ガキを壊しにきやがった。
複数にも張り巡らされた悪意。
僕にもそれは向けられていて、腹が立つが本当にそれは効いた。
「大丈夫か?スーツ達はどこかにいっちゃつてたけど、メールに昼から作戦立て直しに来るって入ってたから、もうすぐくるよ」
ガキが無防備に僕の前に立つ。
ガキは元通りだ。
元通り。
単純なガキ。
抱かせてやっただけでもう元通りだ。
詐欺師の予想を超える単純さだ。
まさかのこんなに簡単に立ち直るのはあっちも予想してないだろう。
バカをなめるな。
バカはバカだから強い。
恋人がバカなのは時にツラいけどね。
真っ直ぐに僕を見る。
可愛いガキ。
僕はガキの右手を掴んだ。
「・・・どうしたんだ」
ガキは優しく囁く。
掴まれてない左手で髪を撫でられる。
甘やかすみたいに。
バカが。
抱かせてやった位で、そんな大人ぶられてもな、笑えるだけだ。
バカが。
僕は本当に・・・お前を殺すかどうか悩んだんたぞ。
でも・・・お前を失うくらいなら、お前がいなくなるくらいなら、それを引き止めるために・・・抱かれてやったんだ。
・・・他のヤツが知ってて僕が知らないお前がいるのも許せなかった。
抱かれてみれば、分かっていたけどお前は優しくて。
優しくて。
優しくて。
「咥えろ、しゃぶれ」
僕はガキに命令した。
収まらない苛立ちを、結局僕はガキにぶつけるしかなかった。
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