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奪還 3
「随分愛されてるじゃないか・・・絆されてやってもいいんじゃないか?」
男は気の毒そうに言った。
「ええっ・・・他の男にオレを抱かせてそれを見てるのが好きなような男はオレの好みじゃないんだよね」
オレは言った。
嘘つきはオレの膝枕で寝てる。
綺麗な、清らかと言ってもよい顔は目を閉じて眠れば、ますます聖人か天使のようだった。
肩先から失った腕があった方を下にして、オレの膝を枕に眠ている。
オレの左手をしっかり握ったまま離さない。
赤ん坊が母親の指を掴んだまま寝てるみたい立った。
すやすやと寝ていた。
オレ達は脳だけは疲れるのだ。
眠ることだけは欲する。
オレの脚は嘘つきが持ってきていた。
連れ去られる車の中で繋げられた。
新しい家だ。
ここの住人がどうなったのかは知らない。
一軒家、辺鄙な場所という条件で家を選んでいた嘘つきは、今回どうやら都会のマンションの一室を選んでいる。
つまり、長くここにいるつもりはないのだ。
「ああ、確かにオレが連れてきたガキとあんたを連れて、ベッドルームにしけこんでたから3Pでもしてるかと思ってたら、そんなことしてたのか・・・ある意味3Pよりエロいね。なるほど、この人そういう趣味なのか。オレの恋人を蘇らせてくれてる時のアレも趣味なんだろうな。いや、意外と見られたら燃えるよな」
男はニヤニヤした。
男は知らない。
あんたは死んだ恋人を抱いてると思っている。
あの人の霊能力で死者の国から呼び出して抱いていると。
あの人から離れたら消えてしまうから、あの人の目の前で抱くしかないのだと。
でも、今回、沢山の命を捧げる儀式が終わったら、恋人は蘇り前のように一緒に暮らせると。
全部嘘だ。
あんたが抱いてるのは死んだ恋人ではなくこのオレだ。
「じゃあ、この人インポなのかよ?まあ、セックスなんて知りませんみたいな顔しているけどね」
男は面白そうに聞いた。
そういえばこうやって、「オレ」として話するのは初めてだな。
「恋人」としてベッドルームで抱かれるのはあっても。
オレをどういう風に聞いているのか分からないが、「恋人」ではない時のオレが嘘つきといるのは当然な顔をしていたし、ちょっとした軽口くらいはかけてきた。
オレは例によって、「恋人」に関すること口にすることは禁じるられている。
「いや、ドロドロに人に汚されたオレを抱くのが好きなド変態」
オレの言葉に男は笑った。
「人は見かけによらないもんだ。この人がそんなプレイ好きとはね」
いや、オレを汚してんのあんただから。
あんたもプレイに参加してるから。
オレはあんたの全身のどこにどんなタトゥーがあるとか、咥えたら見えるへその横の黒子とかまで知ってるからな。
嘘つきは眠るとさらに汚れない顔になる。
天使のような寝顔で眠っている。
オレの手だけはしっかりと握りしめている。
もう、離さないとでも言うように。
「・・・でも、あんたをこの人が愛してるのは本当にだろ、絆されない?」
男は嘘つきの身体の下にある中身のない服の袖を見ながら言った。
嘘つきの頭が捕食者に消されなかったのは、たまたま運が良かっただけだ。
嘘つきは頭を失っても死なない。
でも、戦闘タイプではない嘘つきは頭がなくなれば活動を停止しただろう。
でも、あの時嘘つきはそんなことさえ気にせず、オレに手を伸ばした。
「 !!」
オレの名前を叫びながら。
オレを取り戻すためなら、頭を失うことも、何より、捕まって消し去られることも・・・恐れはしてなかった。
あれはどういうつもりなんだろう。
危険を侵してまでオレを取り戻すことにどういう意味があるんだろう。
オレを使って何かするつもりなのか?
「最近、人としているところを眺めるだけで、オレに触らなくなってたから、そういう意味では飽きてきたのかと思っていたんたけどな」
オレはつぶやく。
「どう考えても愛されてるだろ、オレ感動してしまったもんな」
男が微笑む。
「愛、ねぇ」
オレは苦く笑った。
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