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奪還 5

 男は帰っていった。  「いい子にしてんだぜ?」  そうとだけ言って。  見張りさえ置いていかないのは、オレの意志が縛られていることを知っているからだろう。    オレは膝に嘘つきを乗せたまま溜息をついた。  嘘つきが握りしめたオレの手に、眠ったまま唇を寄せた。  その感触にゾクリとしてしまう自分に困る。  綺麗な男。  あの捕食者みたいに全方位に無遠慮に無秩序に撒き散らすだけの美貌じゃない。  あの男は殺意みたいなモノも撒き散らしてるから、オレにはヤる気がしない。    あんな怖い男相手じゃ勃つモンも勃たない。  嘘つきは禁欲的な美しさで、ヤバい。  オレは知ってしまってるからヤバい。    この綺麗な顔がオレのを咥えたり、舐めたりするんだ。    ヤらしく飢えた顔でドロドロに汚れたオレに突っ込んだりするんだ。   どうせしばらく逃げる機会がないなら、コイツとシたいと思ってしまう自分の淫乱ぶりが怖い。  いや、だって、どうせ監禁されているならその間は快適に過ごしたいじゃないか。      セックスして甘やかされて。    逃げるまでは・・・逃げるけどな。  懲りねーよ。  もう両脚斬るのは勘弁だけどな。 首ねじ曲げられてリュックに詰められるのもゴメンだ。  でも、逃げるまでは・・・。  コイツの嘘に付き合ってもいい。  てか、シたい。  今までも確かに酷い淫乱ビッチだったのは認める。  でも、従属者になってからは・・・欲望に歯止めが効かない。    オレはオレの手を嘘つきの手ごと引き寄せた。  オレの手を握りしめた嘘つきの指にキスをする。  綺麗な指。  労働を知らないような。  誰も殺したことがないような。    夢中でキスを繰り返す。  いや、嘘つきの手は汚れていない。  この手ではない人を殺すのは。  嘘つきが目を開けた。  清らかな眼差しがオレを映し、少し微笑む。    嘘つきは起き上がり、オレの顔に自分の顔を近づけていく。  オレは目を閉じた。  恋人のキスを待つみたいに。  唇さえ開けて。    唇が重なる。  オレは少し震えた。  沢山の人を殺すのはこの唇なのに、それはひどく甘い。   嘘つきの失った左手は肩の先から綺麗になくなっていた。  なくなった断面には皮膚がはり、生まれた時から腕がなかったかのようになっていた。  片手を失ったばかりで、まだその状態では、ぎごちなく慣れない嘘つきのために、オレは自分から動いてやる。  跨がり、奥までくわえこんで、上下に動く。    「あっ・・・いいっ」  オレは叫ぶ。  コイツの好き。  コイツのがいい。  回して、好きなところに当てて楽しむ。  「まだっおっきくなる・・・」  オレは叫んだ。  嘘つきの顔が、オレに犯されているみたいに歪むのもたまらなかった。  「してやるから、まだ出すなよ・・・」  オレは嘘つきに囁いた。  深くまでゆっくり挿れてそこでゆっくりと身体を揺らした。  「うぁっ・・・」  身体がガクガクと震えた。  腰が揺れるのがとめられなかった。    気持ちいい。  気持ちいい。    「気持ち・・いい、すき。・・・これ好き!!」  オレは叫んでいた。    飛びそうになる意識をかき集め、オレは頑張る。  オレは根性あるんだ。  両脚切り落として、リュックに詰め込まれる位には。  止めたくないから、オレはまだシたいから。     オレは叫びながら腰をあげて下ろすことを繰り返した。  ギリギリまで抜いて奥までスライドしたらたまらなかった。  一気に前から放出した。  それが嘘つきの綺麗な顔を汚したのがさらにたまらなかった。     「・・・ダメっ」  オレはそう叫びなからも自分を止めることなく腰を振った。    嘘つきが呻いた。  中で迸る。  その感覚に背中も喉もそりかえらせ、叫ぶ。  それを搾り取る。  たまらなく気持ち良かった。     ソファでキスしてから、床に押し倒した嘘つきを貪ったのはオレだった。  オレがシャツを脱がせ、首筋を舐め、ちょっと乳首も舐めてやった。  嘘つきは呻き声をあげたのがかわいかった。  嘘つきは戸惑った顔をした。  始まってしまえばオレは何でもしたし、どんなセックスでも楽しんだけれど、オレから始めたのは初めてだったからだ。  それがたまらなかった。  年下の綺麗な子に悪さしているみたいで。  失った左手の断面に何度もキスをした。    そこに腕がないことに何故か興奮した。    昔からそうだったみたいに滑らかな皮膚がはられたそこを舐めた。  それだけで、自分のをなめてるみたいにダラダラと前からこぼしてしまった。    嘘つきがオレに伸ばした手を押さえつけた。        「今日はオレがする・・・」  そう囁いたら、嘘つきが苦笑した。  涼しげな顔をしているクセに、ズボンの中に手を入れたらガチガチだった。    先の穴を何度もこすり、扱いてやる。  オレは上手いから、嘘つきがこらえきれないように喘ぐ。  こんな凶悪なモンがついてるとは思えない顔と、そこのギャップに萌える。    「なあ、オレさ、突っ込む方やってみたいと思ってんだけど」  そういたら、ビクリとしたのは嘘つきが感じただけではないと思う。  見開いた目が可愛かった。  こんな顔もすんのか。  本気で驚いている。  その顔を楽しんだ。    手は止めない。  嘘つきはオレの下で喘ぐ。  ホント、やれそう。  可愛いじゃないか。  「・・・嘘だよ。オレはやっぱり挿れるより挿れられたい」  オレは寂しくなって囁いた。    戻ればアイツをオレは抱く。   絶対に抱く。  でも、本当は抱かれたい。  欲しがられて抱かれたい。  でもそれはないから。  嘘つきがホッとしたように微笑んだのは、でもおかしくて笑ってしまった。       

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