105 / 275

奪還 6

 「オレが欲しい?」  オレは唇をゆっくりとそこにむかって移動させていく。    へそを舐めたら、嘘つきのそこが震えて零れるのが可愛かった。    嘘つきが愛しげにオレ髪を撫でる。  勃ちあがったそこ、この指。  少なくとも、これは嘘じゃない。  咥えた。  愛してやる。  ここを可愛がってやる。  喉の奥までつかって扱き、舌で舐めた。     喘ぎ腰を揺らす嘘つきを可愛いと思った。  思ってしまった。  今のここには嘘がないから。  夢中でしゃぶった。    吐き出すそれを飲み、綺麗にすってやった。  「・・・挿れたいなら、後ろ慣らせよ。オレはこっちをまた可愛がってやるから」  オレは服を脱ぎながら嘘つきに言った。    ドロドロに汚れた下着も脱ぎすてる。  そう、嘘つきがイくところを見ただけでオレも、イっていたのだ。  嘘つきの顔に尻を向けるようにして、嘘つきの身体をまたぎ、またそこを咥えた。  イったばかりのそこをそうされるのは、辛さもあるのか嘘つきは身悶えた。  でも構わない。  唇でしごきながら舐めた。     「あっ・・・」  今度喘いだのはオレだった  オレの穴を舐められる感触。  嘘つきがそこを舐め始めていた。  いきなり・・・かよ。     「んっ・・・」  仕返しとばかり責められていく。  熱い舌が襞をなめ、穴をつつかれ、唾液をそそぎ込まれる。  「あっ・・・気持ちい・・・」  オレは嘘つきのを可愛がれなくなってしまう。  濡れそぼったそこを、指でかき混ぜられたらもう、口に含むだけで精一杯だった。    柔らかくほどけたそこを、嘘つきから逃がす。  片手しかないから、嘘つきはオレを捕まえられない。  オレは笑って言った。  「・・・オレがする。今日は全部してやる。寝てるだけでいい」  オレは嘘つきのなくなった腕の断面をまた舐めた。  嘘つきのモノを咥えた時よりオレは興奮した。  そこのなめらかな肌を吸う。  ここにあった腕。  オレを抱いた腕。  もうない。  そこに興奮した。  だってコイツはオレを取り戻すために、これを失ったんだ。  そう考えたら、何故か射精しそうになった。  だってオレ。  こんかに欲しがられたことない。  どんな目的だったとしても。    だからムチャクチャ興奮していた。  舐めた。   吸った。  嘘つきがオレ髪を撫でて、笑った。    嬉しそうに。  オレは嘘つきに何もすることを禁じて、ゆっくりと嘘つきのそこに腰をおろすようにして、穴にくわえこんでいった。  久しぶりのそれが好きだと思った。  「   ・・・」  嘘つきに名前を呼ばれただけで身体が震えた。    「・・・オレをあの男に渡すつもりだったのか」  オレは緩く腰をゆすりながら言った。  嘘つきが不思議そうな顔をする。  身体をささえるために床についたオレの手をとり、口付けた。  そんなとは有り得ない、と言うように。  「蘇った恋人を返してやるということが嘘なのか!!」  オレは思い至った。  嘘つきはにっこりと笑った。   嘘つきは男を騙している。  嘘つきは本物であれ、偽物であれ、恋人を男にかえしてやる気が全くないことをオレは悟った。  あんなにも恋人を求める男に何一つ与えるつもりはないのだ。  騙すための・・・嘘以外は。    「・・・オレを抱かせたのも・・・お前の趣味なだけなんだな!!」  オレは叫んだ。  でも、腰は動く。    味わう。  ああ、気持ちいい。  「あっ・・・!!」  軽く達してしまう。  嘘つきは切なげにオレを見る。     オレを欲しがる、雄の、顔。  残酷な男。    残酷な男。  あんなにも恋人を求め、全てを支払ってもこんな風に裏切る。  怖い男。  オレは嘘つきが怖かった。  でも、気持ち良くて。  見つめられる視線が欲しくて。  オレは嘘つきを使って快楽を貪った。  貪り続けた。  嘘つきと床の上で抱き合う。  いつもなら意外と力持ちの嘘つきが風呂まで抱えていったり、ベットに寝かせてくれたりしてくれるが、片手しかない今は無理だろう。  でも、汚れた身体のまま抱き合うのは・・・いやじゃなかった。  嘘つきが何度も何度も唇を、髪や額や頬におとしてくる。  それが心地よかった。    嘘つきは微笑む。  嬉しそうに。  嬉しそうに。  それも嘘なのかもしれない。  言葉でオレを騙せないならぱ言葉以外を使って騙すしかないからだ。  コイツは嘘つき。  信じさせて全てを奪う。   忘れてはいけない。  でも心地よかった。    嘘つきが唇をなでる。       いつものおねだりだ。  「はいはい、好き。好きだよ」  言ってやる。   嘘つきは嬉しそうに笑う。  嘘つきは会話ができない。  嘘しかつけないからだ。  嘘や騙す為の会話なら流れるように話すのに、そうじゃないコミュニケーションは言葉以外でしないといけない。    嘘つきが話せるのは「質問」と「事実の確認」だけなのだ。  唇をなでられる。  「言って」とその指が言う。    「好き」  諦めたみたいにオレが言う。        そんな嘘を嘘つきは嬉しそうに聞いていた。  嘘でもいいのか。  それとも、こうやって喜んでいること自体が嘘なのか    何度も何度も唇を撫でられ言わされた。   「好き」    そして、甘く何度も口づけられた。  ひどく甘く、心地よかった。  嘘つきの胸に頬こすりつけた。  もう少しだけ休んで、シャワーを浴びよう。  それから、ゆっくり状況を確認して、なんとか出来ることを考えよう。  背中をなでられるのが心地いい。  「ずっと・・・抱かなかったくせに」  思わず責めるように言ってしまって慌てる。  何、欲求不満の恋人みたいなこと言って・・・。  でも不思議だった。    あれだけしてたのに、最近は嘘つきは男や少年に抱かせているのを見るだけでしなくなっていたから。  てっきり男に引き渡されるのかと。  嘘つきが声をあげて笑った。    何、そのしたり顔。  「・・・何ソレ。お預けくわせたらオレが自分からお前を欲しがると思ったわけ?」  オレは思いついたことを言った。  嘘つきはニコニコする。  そしてギュッと片腕で抱きしめる。  ああ、そうかい。  そうだな、確かにオレは自分から欲しがったよ、お前を。  腹が立った。  顔を背けると慌てたように唇が髪や顔に落とされる。  背けた方向に腕を無くした左肩が見えて。  オレはそこにそっと触れた。  全部嘘でも、コレだけは本当。  コイツはオレを奪還するために腕を失った。     その事実に性的に興奮してしまうオレは・・・おかしいのだろうか。  「少し休んだら、今度はお前がオレにご奉仕しろよ。オレが頑張るのはもうないからな」  オレは目を閉じた。  嘘つきの失った腕は新しいオレの性癖になった。  あの断面を舐めたい。  吸って、噛んで・・・オレのをあそこにこすりつけたい。  ゾクゾクした。  オレはそう思いながら眠りについた。  脱出を考えなければ。    

ともだちにシェアしよう!