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カルト2
教団は彼が16の頃に解体した。
出家信者が捧げる全財産や、在家信者達の献金や、いわゆる霊感商法が教団の資金源だったが、あからさまにやりすぎた。
教団を広げるために、金を欲しがる神のために、信者達は手段を選ばなくなっていったのだ。
始まりから密かに死人は存在していた。
でも、それは止まらなくなっていった。
神のために。
神のために。
信者達は捧げ尽くし、異教徒達から騙し、奪い、必要なら殺していった。
彼らの信仰の支えの一つになったのは、神のそばで微笑む、美しい少年の姿とその微笑みと、その言葉でもあった。
神の見込み通り、少しずつ年老いていく神とは違い、花開くように美しくなっていく彼は人々が跪きたくなる魅力を持っていた。
彼は拝謁するために現れた人々に望む言葉を与える。
ずっとその人か欲しかった言葉を。
心を開けるパスワードは誰にでも存在している。
それをささやかれたならば、その人に捕らわれてしまう言葉を。
それは元々神の専売特許だったが、今では彼の方が上手くやれるようになっていた。
真っ白な詰め襟のような衣装を纏う彼に跪く。
上位の信者になれば、彼の身体を愛することを許され、神と彼の交わりを見ることを許される。
そのことも、信者達の狂気に火をつけた。
そのつま先だけにでもくちづけたい。
その指先にだけでも触れたい。
神への信仰と彼への欲望は希望を失っていた人々の歯止めをなくした。
信者達は捧げた。
捧げ尽くした。
奪い、殺してまで。
とうとう警察が聖地まで乗り込んでくることがわかった。
神を捕らえるために。
神は捕らえられ、辱められるのをよしとしなかった。
彼はある意味真の信仰者だった。
彼は自分が作り出した宗教を信じ切っていた。
持って行こう、そう思った。
この世界で得たもの全てを、来世へと。
警察に潜り込ませた信者の連絡により、踏み込まれる時間はわかっていた。
出家信者、幹部、そしてここで生まれ、出生届けさえ出されていない子供達、そして彼は神の前に集められた。
神は言った。
「我が子達。この世界を捨てて新しい世界に転生しよう」
その言葉に皆頷いた。
彼も求められるまま頷いた。
その頃には彼の頭には宝石が埋めこまれていた。
自分で思いついたことが真実だと思い込みはじめた神の命令で、教団の元外科医達により、頭蓋骨に穴を開けられ、そこに宝石をはめ込まれたのだ。
その際なんの根拠もなく、神通力を増すためということで、長い針が脳に打ち込まれた。
彼はそのいい加減な手術でさえ受け入れた。
受け入れる以外のことを知らなかったから。
生まれた時から、この狂った男のおもちゃでしかなかった。
それ以外の自分が分からなかった。
この男が狂っていて、教団の信じているものが嘘でしかないと知っていても、彼には何もできなかった。
デタラメな手術で命を落としてもおかしくなかったのに彼は死ななかった。
ひと月以上言葉が話せなかったが、徐々にそれからは何の問題もなく、望む言葉を人々に与えれるようになっていた。
そして、神が望んだ通り、綺麗にそりあげられた頭に宝石を埋めこまれ、真っ白な衣装を着た彼を信者達は崇めた。
確かに、この世生き物ではないかのように、清らかだった。
そして、今集団で死に行こうとする人々の中で、彼はとても美しかった。
神は言った。
「さあ、皆で行こう」
彼は見ていた。
信者達が互いに刺しあい殺し合うのを。
彼らは迷うことなく、二人一組になり、順番に互いにの心臓を刺しあった。
のた打ち、血を流し、叫びながら死んでいった。
その姿を見ても、次の順番の信者達はおそれなかった。
これが最期の試練だと神が言ったから。
死にきれないモノは最後に死ぬことになっている幹部が殺してやった。
刺されて死ぬ直前だけ、信者達は自分自身に戻った。
能面のようだった顔が痛みや苦しみで歪み、「死にたくない」と叫ぶものまでいた。
彼は初めて信者達を人間として認識した。
今ここにある死だけは、信者達をその人自身にもどしていた。
同じようなことを言い、量産されたロボットのようだった信者達を。
彼は愛しささえ感じた。
死に方は誰一人一緒ではなかった。
生きている時は、同じようなものでしかなかったのに。
彼らは神をトップとする集合体だった。
ハチや蟻のような。
神のためにそれぞれの役割を果たすだけの、生き物。
それが今、一人一人異なるものとなっている。
うっとりと彼は信者達を眺めた。
死にきれない者の手を握り、その手にくちづけてやりさえした。
彼は生まれて初めて欲情していた。
今まででも、触られれば喘いだし、挿入されればそこで達することもした。
でも、その快楽はどこか他人事だった。
明日なくなっても構わないモノでしかなった。
だけどこれは。
脳が痺れる位に欲情していた。
痛い位に勃起していた。
神がそんな彼に気づいた。
手招きされ、服を脱がされる。
神もまた、欲情していた。
ただ乱暴に挿入された。
だがそれが良かった。
彼は初めて神との性行為を終わるのを待つものではなく、楽しんだ。
死んでいく信者の、消えていく命と、苦痛の前で、放つことも、イカされることも、堪らなく良かった。
最期に死ぬ予定の幹部と、神と彼だけになるまで、彼は心の底からセックスを楽しんだ。
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