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カルト 6

 「アイツが言っていただろう。カルトを調べろ。脳に外科手術をするような、って。調べたら一つだけあった6年前だ」  スーツが言った。  あの人は俺とこのままセックスするか、スーツの話を聞くかを真剣に悩んでいたが、今回ばかりは話を聞く方にしたらしい。 いつもなら迷わずセックス一択なのに。  あの人は怒っているからだ。  詐欺師に怒っているからだ。  多分俺に怒ってしまう分の何もかもを詐欺師に押し付けることにしたのだ。  詐欺師にもう、安らかな死はない。  あの人は怒っている。  とても怒っている。  今回ばかりは詐欺師の負けになる。  何故なら、あの人は詐欺師を「殺せる」武器を持っているこれど、詐欺師には「殺せる」武器はないからだ。  詐欺師の能力はすごい。  情報屋と俺の話から、詐欺師の能力は推測されている。  人を暗示にかける能力だ。  しかも、相手が自分を信じさえすれば、自ら死を選ぶことさえさせられる。  しかも、ネットを経由して、その能力は使われさえする。  大量の人間相手にもその能力は有効で、人々は暗示にかかり、彼を信じさえすれば、満ち足りたまま、自ら死んでいく。  「充足」  そうその能力はスーツ達に名付けられていた。  その能力では、あの人を殺せない。  捕食者の不死身性をどつにも出来ないからだ。   その能力だけでは。  でも、あの人は詐欺師を殺せる。  詐欺師の左腕を消した銃で詐欺師の存在を消し去られるのだ。    とりあえず俺を離す気はないらしく、俺を隣に座らせ、俺の肩を抱いてたまにキスを髪や頬におとしながらあの人はスーツの話を聞いていた。  「新聞などでも騒いでいただろう?『光の國』。教祖と出家信者達が200人以上集団自殺したあれだ」    スーツは言った。  スーツの元嫁は興味無さそうにきいている。    俺もテレビで観たことがある。  小学校の時だ。  霊感商法だけではなく、沢山の人達が拉致され殺されていたことが発覚。  捜査、逮捕のために警察が教団の本部である山中の集落に踏みこんだところ、教祖も信者も死んでいたというヤツだ。  特に教祖は目玉をえぐられ、舌鼻耳まで削がれていたというので、評判になった。  信者達は互いに殺し合ってなくなっており・・・そこで何が行われていたのかはわからないままだ。  集団自殺?  でも、なぜ教祖を?  謎で終わった事件だった。    「あの場所から逃げ出した人間が二人いることは分かっていた」   スーツは立ち上がり、写真を二枚テーブルに置いた。  一人は20代後半の若者。  教団の上位信者の証拠であるグリーンの詰め襟をきている。  端正な顔の若者だ。  もう一枚は、明らかに盗み撮りだと分かる写真で少しぼやけていた。  俺と同じ年頃の少年だ。  すぐに分かった。  詐欺師だ。  異様なのは、綺麗にそりあげられた頭の左側頭部にデカい宝石が埋め込まれている。  頭蓋骨に穴を開けている、とわかる。  「一人は幹部。もう一人は後継者とされていた少年おそらく詐欺師だ。頭に穴を開けられている。多分、この跡をアイツは見つけたんだろう」  スーツは言った。  おかしい。  何故捕食者になったのに傷跡が消えない?  俺の壊れた膝は治ったし、手術のあともきえてきるのに。  スーツもそこは気になっているようだが、とりあえずそこはおいておくべきだ。  そこはそれほど問題じやない  「人体改造。頭蓋骨に穴を開けて埋め込んでいる。教祖の趣味だ。在家信者の証言から少年への性的虐待が日常的にあったことも認められている。彼にかぎらないが。そこで生まれた子供達が教祖の子供達であったことも分かっている。おそららく、彼もそうだ。出生届けも出さず、そこで育てられた」  生まれながらに狂った男に捧げられた子供達。  俺の胸が痛んだ。  酷い。  「何故、誰も助けようとしなかったんだ?」  俺は腹が立った。  「子供達の数は多くはなかった。それに、教団はあちこちの政治団体に寄付をおくり、必要なら信者を動員し、政治運動を手伝った」  金と人。  政治家が欲しがるそれを、教団は与え続け、保護を得ていた。  殺人さえ発覚しなければ、まだ存在したかもしれない。  「宗教の自由などもあるし。信者の子供達を受け入れたがる学校などもなかったから野放しにされた」  子供達は狂った人々の中で育つ。  「詐欺師とその幹部が教祖を殺した。・・・その後は追いかけなかったのか?」  あの人は聞く。  「警察は幹部が主犯だと思っていた。信者達が自殺した後、教祖を拷問し、その死体をそれを恭しく祭壇に飾っていた。そして、後継者を連れ去ったのだと。だけど一年後、この幹部は住人を殺し不法占拠していた家で自殺している。自分で自分の腹を切り裂いて。少年の方は行方知れずだ」  スーツは言った。    

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