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カルト 10
彼は戻ってきた。
隠しカメラを片付けるために。
死は美しかった。
目の前で見たかった。
そうすればもっと死を感じられただろうに。
死体になってしまった身体は汚いと思った。
この家を出来るだけ片付け、拭き取れとれるところは全て拭き取ったけれど・・・完全ではないかもしれない。
まあ、いい。
元々逃亡者なのだ。
なんとでもなる。
この男が汚されるのは好きだった。
何でもなすがままになるのは良かった。
それだけ支配できるってことで。
ドロドロになり、汚れれば汚れるほど、傷つけばきずつくほど、支配しているのがわかって良かった。
傷つき犯され、屈辱に震えても、そこに彼への愛を見いだす姿は滑稽で、でも、支配欲は満たされた。
自分のを挿れるより・・・楽しかった。
でも汚れきった身体に汚されたこと教え込み、また支配しながら抱くのも楽しかった。
自分から自分であることを捨てたモノは支配しやすい。
寂しくなるかもしれない。
ここまで楽しませてくれたのだから。
でも、また見つかる。
部屋の真ん中で転がる死体にチラリと目をやった。
死に行くその瞬間だけはこの男を愛していた。
それは間違いなかった。
でも今は。
殺すのは好き。
でも、死体は嫌いだった。
「愛していましたよ?・・・そしてありがとう」
彼は優しく囁いた。
冷たく、汚いものをみるような視線をむけながら。
それは嘘。
その唇からこぼれるのは嘘だけ。
微笑みを浮かべたまま、彼は部屋を出て行った。
振り返りもしなかった。
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