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助け手 8

 「なんかさ、本当にオレお前なら抱けそう」   オレも優しく嘘つきの胸にキスを落としながら言った。  乳首を舐めてやれば、嘘つきは吐息を漏らした。  「お前、後ろ使ったことあるだろ。挿れてやろうか?」  囁きながら、後ろの穴を撫でてやれば、嘘つきはピクリと身体を震わせ、困ったような顔をした。  可愛い。  マジ、ヤってやろうか。  「・・・嘘だよ。てか、お前がして欲しくなった言えよ。オレ、お前だったらどっちでもいいや」  オレは笑った。  でも、本気だった。  抱きしめて、コイツを感じたい。  それならどちらでも良かった。  中で感じたいのか、中を感じたいのかそんなのどちらでも良かった。  嘘つきはホッとした顔をした。  オレに挿れたいらしい。    その顔がおかしくてまた笑った。  嘘つきに乳首を噛まれて、やっと笑いが止まった。  何これ。    こんな話ながら笑いながら。  優しい気持ちになりながら。  何これ。  オレはこんなセックスは知らなかった。  嘘つきの繊細な指がオレの穴に触れる。  優しい触れ方に、快感より先に胸がいたくなる感情がある。  大切にされていると思ってしまう。  撫でられ、そっと指は入ってくる。  優しく丁寧な愛撫は、初めて抱かれた時以外はそう。  オレの快感を優先し、嘘つきはとても優しくオレを抱く。  ずっとずっと。    それを信じていなかった。  それも嘘だと思ってた。  今も、嘘かもと思ってしまう。  でも。    「あ・・・そこ、好き」  強請る。  嘘つきの指が中を溶かすような快感をくれる。  嘘つきはオレの乳首に唇を落とす。  そこも溶けそう。  甘くたゆたうような快感にオレは溺れた。  嘘つきと触れ合う皮膚の体温が、喘いで求める空気が、甘くて、浸っていたくて、なのに苦しい。  かき混ぜられ、広げられる。    嘘つきの髪を撫でた。  頭の傷口に触れる。  そこを何度となく撫でた。  全てが癒える捕食者になっても、消えることのないその疵痕。    お前はどこから来たんだ?  そこがお前をこんなにしたのか?  理性を保捕食者は・・・捕食者になる前から殺人衝動を持つ。  お前は多分、こうなる前から殺してきたんだろ?  嘘つきの目に欲望が滲んでる。  涼しげで清らかな顔立ちに欲望が浮かべば、震えるような色香がある。  「お前のそういう顔、クる・・・ギャップがたまんね」  オレは囁いた。  嘘つきは切磋詰まった顔で、オレの穴を解す。  息が荒くて早く入れたいのがわかるのに、その指はゆっくりと優しい。   我慢してくれてる。  その事実に胸が痛くなる。    こんなに優しく抱いてくれたのは・・・コイツだけだ。  ドスケベのくせに。    「いいよ、来いよ・・・」  オレは囁いた。  嘘つきの指がゆっくりと抜かれた。    オレはもう一度、嘘つきの腕の断面にキスをした。  オレにわかるたった一つの真実。  腕を失ってでも・・・あの瞬間、命を失ってでも嘘つきは、オレを欲しがった。  オレだけを。  知ってる。  わかってる。    オレを抱けないアイツはそれでもオレを愛してくれている。  それはいわゆる恋じゃなくても。  友情とか家族愛みたいなんでも、間違いなく。   今だってアイツが助けに来てくれるって信じてる。    アイツのあの子はオレを一番信じてる。  あの子は頼めばアイツをオレにくれただろう。  あの子は思っているからだ自分よりオレの方がアイツに相応しいと。    愛されてこなかったわけじゃない。    むしろ、愛されている。  愛している。  アイツもあの子も。  でも、でも。    誰かに求められ抱かれたかった。      誰かを求めて抱きたかった。       そして今求められている。  求めたかった。    脚を広げる。     受け入れるために。  あてがわれるそれに自ら迎えるように腰をこすりつける。  甘く熱い、それ。  それをもう熟れきったそこで受け入れたかった。    嘘つきが目を細め、焦らすように浅くそこに押し当て、離す。  「挿れて・・・欲しい。ぐちゃぐちゃにして」    オレは強請る。  単なるやらしさを楽しむ言葉遊びじゃなくて、煽るつもりではなくて、本当に欲しかった。  嘘つきは呻き声を上げて、オレの中に入ってきた。  オレは高い声をあげた。    駄目だ。  オレは。  オレは。  この男が欲しい。  オレは腰を振って、締め付けて、中のそれを感じることに夢中になりながら絶望した。  気付いたから。     オレはこの男が欲しい。  欲しいんだ。     揺すられて溶ける。  優しさに蝕まれる。  柔らかくおしこまれ、ギリギリを抜かれる。  甘さが危うかった。  絡みつくような甘いゼリーの中で、溺れるような快感には終わりがなかった。  「気持ち・・・い」  オレは喘いだ。  餓えみたいな、自分を傷つけ、血管を切り開いているみたいな快楽はそこにはなかった。  どれだけ傷つき、快楽を貪るかのようなチキンレースみたいなあの快感はなかった。  ただ、優しくて柔らかくて、心の空っぽの部分にまで流れ込むような甘さがあった。  「お前・・・も、気持ち、い?」  オレは嘘つきに尋ねた。  嘘つきは気持ち良さそうな顔をしていた。  蕩けたような顔で嘘つきは頷く。  「そっか・・・なら良かった」  オレは笑った。  嘘つきはオレの頬にキスを落とした。  顔中にキスを落とす。    そしてオレを見つめる。  その目の切なさも、嘘?  それとも、今だけの本当?  何か言いそうになった。  何かが溢れて言葉になろうとした。  それは危うい言葉だった。  だからオレは、代わりに嘘つきの唇を貪った。  「いっぱい・・・擦って」  ねだった。  与えて貰えると知っているおねだりには、甘さがあると知ってしまった。     嘘つきはそうしてくれた。  オレは甘く喘いだ。  嘘つきがオレを見つめながら泣いていた。  綺麗な顔が、微笑みながら涙を流す。    何で。  何で泣くんだお前。  「どうした・・・?」  オレは指先で嘘つきの涙を拭う。      嘘つきはオレのその指先に何度も何度もキスをした。  そして、オレを出口まで連れて行くために、オレを優しく激しく擦りあげた。  オレは身体の一番奥で嘘つきをうけとめた。    こんなにシンプルなセックスで、オレは蕩けた。  蕩けきった。     そしてまた、嘘つきを求めた。  嘘つきはオレに求められる度に与えてくれた。    その夜嘘つきは何度も泣いた。    オレにはその意味が・・・良く・・・わからなかった。

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