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ゲームの達人 2
「長く・・・彼を苦しめた。彼には幸せになって欲しい。性行為もどんどん楽しんで欲しい」
彼女は生真面目な顔で言う。
性行為にも色々ありまして。
受け入れる立場ってのはスーツは望んでないと思います。
賭けてもいい。
いや、俺も望んではなかったけど、やってみたらまぁそんなにわるくないってか、いや、楽しんでしまってますけど、でも、俺だって挿入する方がいいんですよ。
「だからまず、彼に助かって欲しい。そうなったら、彼と彼がうまく行くように応援したい」
彼女は言った。
ちょっと俺は気になった。
「あんたはそれでいいの?スーツがほかのところへ行ってもいいの?」
俺なら絶対に嫌だ。
事情があってセックスできなくなっても、あの人を手放したいとは思わない。
あの人が人のものになるなんて耐えられない。
「自分が相手を幸せにしないのがわかっているのに、相手を望めるわけなどない。それに十分幸せだった」
彼女は微笑んだ。
無表情だった顔に花が咲く。
それはあまりにも鮮やかで。
思わず目を奪われた。
「私は何も分からずに彼を好きだと言ってしまった。なのに彼は私を受け入れてくれた。結婚だって断るべきだった。まともに話もできない女ではない、 セックスもできない女ではない相手と彼はもう暮らすべきだ」
彼女は呟く。
「いや、だからと言って幼なじみの男相手に受け身のセックスするはめになるのは俺は絶対違うと思うよ?」
俺は一応言ってみる。
彼女には挿入する、されるはささいなことなのだろう。
そうなの?
なんか俺もわからなくなってきた。
「確かに特殊な嗜好の人間には私の身体は法律的に合法であるため、魅力的ではあっても、セックス出来ないのならば意味がないだろう?」
彼女が言う。
あ、分かっていらっしゃるのね。
特殊な嗜好。
「彼は『自分はロリコンではない』と言うが・・・。『私』だからだと言うが・・・。」
彼女はさすがに言葉を濁す。
うん。
だよね。
言えないところは理解する。
「確かに私以外の女性は私のようではなかったが・・・」
彼女の言葉に驚く。
「浮気相手も知ってるの?」
俺は良く分かんなくなってきた。
「・・・私が提案した。彼が我慢する必要はないと。彼は胸の大きい女性とばかり付き合っていた」
彼女が言った。
ますます分からない。
俺には分からない。
セックス無しの恋も知らない。
同性の友人の身体に欲情してしまう自分を知ってから、それをかくすのに必死で恋なんか知らなかった。
生まれて初めて一目惚れした相手に脅され、その日その場でセックスした。
てか、犯された。
無しの関係なんて・・・知らない。
我慢すらされてない。
そんな関係が成り立つことも知らない。
「でも、スーツはあんたを選んだんだし・・・」
と言いかけて気づく。
この二人はもう離婚していることに。
「そうだ。彼は自分で私を選び、私を手放すことも選んだ。だからこそ、次は幸せになって欲しい」
彼女はポツンと言った。
「私では無理だった。分かってはいたが」
彼女がさらに小さく見えた。
「・・・私は人の気持ちを察することが出来ない。彼の想いも理解してやれなかった。だが、彼の幸せを望まないことはない。彼にはそして彼にも幸せになって欲しい」
彼女は静かに言った。
そっか。
いい子だな、随分年上だけど。
俺は切なくなった。
あの人に捨てられて、それでも俺、あの人が幸せになんて・・・望めない。
この子、いや、この人、すごく良い奴、いや、良い人なんだな。
なんか泣けてきた。
痛く無いはずないだろ。
好きと言われて、捨てられる。
どんな理由があろうとも。
スーツの事情はわからなくもないけど。
こんな仕事してるから・・・。
未練たっぷりだし。
でも。
捨てられる痛みを思った。
いい子だな。
いい子だな、本当にいい子。
もういいや、スーツ。
あんた、情報屋に抱かれてしまえ。
それはそれで悪くないって。
この子がそう望んでるんだったらそうしてやるべきだよ。
捨てたんだから、それくらいの望み叶えてやれよ。
俺はこの子の望みか叶うように全力を尽くそうと思い始めた。
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