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ゲームの達人 3
インターホンが鳴った。
業者の訪問営業か?
あの人が帰ってきたのなら、鍵があるから勝手に入ってくるし、スーツにかんしてはいつもカギを渡した覚えもないのにいつでも入ってくる。
このオートロックのマンションで、一階のインターホンでこの部屋のボタンを押したならば、警護してくれているスーツの配下がソイツに色々うるさく質問するはずだ。
だから放っておく。
でも、またインターホンが鳴った。
何故また鳴る?
スーツの頼んだ警護がいないってことか?
俺は室内のインターホンの画面をみた。
そこに映っていたのは、俺を捕らえて詐欺師の元に連れて行ったあの傭兵だった。
警護はどうした?
傭兵はにこやかに画面ごしに俺に手を振った。
「迎えに来たよ」
ソイツは言った。
オレは窓の外を確認した。
ここは8階だ。
そう簡単に外から来るとは思わない。
窓を開けベランダから下を確認する。
不法に駐車している車も、集団でいる人影も見当たらない。
どれがいい?
選択肢を検討する。
ここから逃げる?
ここに立てこもる?
あの人に連絡しなければ。
無線機のスイッチを入れる。
「誰か、誰かいる?聞いてる?」
マイクに向けて言ってみる。
反応がない。
そう、逃げた詐欺と傭兵を追っているはずなのだ。
その逃げたはずの傭兵がここに来ているとは誰も思いはしないはずだ。
・・・しかたない。
俺が判断して動くしかない。
俺は不思議そうに俺を見つめる彼女に目をやった。
目的は彼女か。
俺は彼女を手招きした。
「ここに隠れてて」
クローゼットの中に入るようにクローゼットの扉をあける。
彼女は大人しく入った。
「俺が開けるまでここにいて」
俺は彼女に囁いた。
不安げな彼女に微笑む。
「耳を塞いで。何も聞かないで」
俺は言った。
不安そうな彼女の髪を撫でてあげたかったけれど、彼女は触られることを嫌がると聞いていたのでやめた。
これから起こることが音や光といった刺激さえ過剰に反応してしまう彼女の苦痛にならなければいいけど。
「大丈夫だから」
俺はできるだけ優しく囁いた。
大人しくクローゼットに丸くなる彼女は無力で小さかった。
守らないと。
俺は思った。
ベランダからの窓からは来ないと判断した。
あいつは単独で動いている。
だからこそ、追跡を逃れたのだ。
探しているのは、車で逃げた傭兵と詐欺師と情報屋の三人組だからだ。
単独で外から侵入するのはあまりに良い手じゃない。
ましてや、彼女を連れ去るつもりなら。
目立ちすぎる。
俺は迎え討つことを選択した。
彼女を抱いてベランダから降りることも考えたが、さすがにリスクが大きかった。
彼女は俺と違って再生しないのだ。
一応銃を腰のホルスターにいれておいたが、俺が手にしたのは山刀だった。
逃げることも考えて、腰に山刀を収めるケースも下げておく。
俺の筋力ならこれ一振りで首も飛ばせる。
接近戦なら銃よりこちらの方が早い。
俺はあえてドアカギを開けた。
そしてドアの前で待つ。
どうせ何らかの方法でドアを開けるだろうから、鍵をかけても無駄だ。
開けるためにドアに張り付いたところを迎え撃つ。
もちろん、撃たれる可能性はある。
というより確実に撃たれる。
だが、俺は死なない。
撃たせるが、同時に首をはねてやる。
腹を決める。
俺はドアの前で息をひそめた。
廊下を歩いてくる足音がした。
イラつく位のんびりした足取りだった。
ドアの前で止まる。
ドアノブがガチャガチャと動き始めた。
今だ!!
俺はドアを思い切り開けた。
山刀を握った腕を振りかぶる。
だが見たものに俺は目を疑った。
傭兵が銃を構えているのは分かってた。
そんなのは想定の範囲内だった。
だけど傭兵が肩に担いでいたのは俺が映画でしか見たことのないモノだった。
地上からヘリコプターとかを撃ち落とすような、アレだ。
「ロケット・・・ランチャー!?」
俺は思わず口にしていた。
でもそれは俺がドアを開けると同時に発射されていた。
それは俺を爆破はしなかった。
あまりにも威力がありすぎて、俺の腹を貫いて飛んでいったのだ。
俺の腹にドテカイ穴をあけ、部屋の壁を突き破り、爆発した。
俺は爆風で壁にたたきつられた。
部屋はもう、壁を失っていた。
ドアから窓まで筒抜けになっていた。
あの人ほそれなりにこの部屋に愛着を持っていて、高級な家具で部屋を整えていたのに。
彼女が隠れたクローゼットが無事であることにホッとしたが、さすがに動けない。
背骨まで失っているので立てないのだ。
「・・・あっ・・・」
俺は呻いた。
まさかまさか。
こんなことするなんて。
「すげえな。本当に死なないな」
傭兵は感心したように要った。
「人間相手に撃ったことはなかったんだけどな、さすがに・・・コレは効くだろ」 傭兵は無邪気と言ってもいい笑顔で笑った。
「そんな・・・デタラメなもん使うなんて・・あんたバカ・・・」
俺は罵った。
「ホント、パートタイムの仕事にこんなものまでつかって採算合わないんたけどな、今度の仕事は儲け無しでも引き受けてる仕事だからな。いつも以上に何でも使う」
傭兵が部屋を見回す。
壁を取っ払われて、ワンルームになってしまっている。
「多少撃たれても構わないい、とか思ってたんだろ?それが素人なんだよ。死なないってのは確かに怖い。でもな、撃たれてもかまわないって舐めてくるヤツはそれほど怖くないんだよ。・・・いい勉強になったな」
傭兵は優しいと言ってもいい声色で言った。
「さて、お姫様は・・・っと」
そして、クローゼットを開けた。
彼女は両耳を押さえ、丸く固まっていた。
ぎゅっと目をつぶり震えている。
彼女には先ほどの爆音は耐え難いものだったはずだ。
「・・・お迎えに参りましたよ」
傭兵は囁いた。
幼い少女をなだめるように。
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